月別アーカイブ: 2013年1月

セッティング

以前から何度かこのブログでご紹介した事がありますが、自分は結構ルアーのフックサイズを変更したりする派です。
といっても、全てのルアーのフックを交換するのではなくて、ノーマルサイズとフックサイズを変更したルアーとを状況によって使い分ける感じです。

左はノーマルサイズの#4で、オープンエリアやリップラップといったスタックする確率が低い場合や、ファーストリトリーブでソフトバイトを掛けていくような場合に使用。
右の#6にサイズダウンした方は、込み入ったカバーなどスタックを最小限に抑えたい時などに使用しています。

ルアーというのはフックサイズを変更すると若干ながらアクションや特性が変わります。大きいフックは重さも重い為、ルアーの姿勢を制御しやすく、ルアーが暴れるのを抑えてくれるので速く巻く時などに効果的です。反対に小さいフックは重量が軽いので、ルアーの浮力が増し、レスポンスが向上する為ゆっくり巻いてもよく泳ぐようになります。つまりフックサイズの変更は、ひとつのルアーの特性そのものを「オープン向き」や「カバー向き」にリセッティングする効果があります。

この写真の2つのウィグルワート。左の#4仕様はステディリトリーブでもバランスを崩し難く、真っ直ぐ進んできますが、右の#6はいつものバタバタ暴れる千鳥仕様。魚がショアのカバーに入っている時と、反対に中層に浮いてしまっている時で使い分けます。

さて、フックサイズの変更によるリセッティングでは、自分の欲しいアクションを作る事も出来ます。

O.S.Pさんのバジンクランクは、ハイレスポンスでハイピッチなサーフェスクランクで、ゆっくり巻いても非常によく動く優秀なルアーです。しかし、自分的にはもう少し広く速く探りたかったので、フックのサイズや取り付け方法を変更しました。

ベリーフックのサーフェスリグを逆向きにして、テールフックから外したスプリットリングを介してST-36BCの#6をSTバランスで取り付け。

テールフックは1サイズ大きいスプリットリングと#4のフックを装着。
こうする事でほんの少しローピッチになり、ちょっとだけ速く巻けるようになる他、テールで蹴る水の量が増えるのでV字ウェイクが大きくなり、より広範囲にアピールします。もちろんオーバーサイズのテールフックですから、オープンエリアの突然のバイトもフッキング率は高いです。カバー周りはノーマルセッティング。オープンエリアや少し水深がある所ではこのセッティング。と使い分ける事で、よりこのルアーでキャッチ出来る魚の量が増えるのではないでしょうか。

ルアーは発売前に様々な条件でテストを経て、入念なセッティングを行ってから発売されるのですが、ただそのまま使うだけというのは勿体ないです。色々なフィールドで、様々な条件で、その状況に合う使い方を見つけてやるのもルアーやメーカーへの愛情だと思います。釣り場の数だけ、釣り人の数だけベストセッティングがあるのではないでしょうか。ぜひ皆さんのベストセッティングを見つけてみてください。多分何倍もそのルアーの事が好きになりますよ♪

黒いルアー

ルアーを作る仕事をしていると、色んなカラーリクエストを頂くわけですが、その中で最もサガるというか、塗る気が起きないのが実は「ブラック」ですww

いや、釣れるのは知ってますよ。水中で最も目立つ色のひとつですし、マッディとか、夜とかそんな条件付けなくてもよく釣れるのは、ラバージグなどのカラーを見ても明らかです。
それでも、ルアー作りを生業にする人間にとって、ブラック1色というのはどうにも抵抗があり、「意外と真っ黒って釣れるんですよね」とか、「今度黒塗って欲しいんですけど」とか言われると、余計に塗りたく無くなりますw

その理由として、まず第一にテンションがまったく上がりません。
そりゃ簡単ですよ。真っ黒ですからね。たったの1工程です。普通のカラーで言ったらベースの白吹いて終わり、みたいな・・・。
この仕事してると、釣れる色を開発するのはもちろんですが、買ってくれた人が「おお、ここらへんどうやって塗ってるんだろう?」とか、「これって昔あったあのカラーの塗り方だよな」とか、目でも楽しんで貰えるよう、日々新たなテクニックを模索して「お!新テク発見♪」とかやってる訳ですよ。そこに「ただの真っ黒でいいんでチョチョイっと・・・」と来られると思わずズシ~ンと・・・。
そんなチョチョイと塗れるカラーを販売するのってプロとしてどうなの?とか、普段はなりを潜めている安いプライドまでが、ここぞとばかりに首をもたげていっぱしの顔する訳ですよ・・・。
ま、釣り道具ですからね、釣れるかどうかにしか興味ないと言われればそこまでで、作る側の都合なんて大した意味はないと思うんですが、黒一色で釣れるなら、青一色とか、黄色一色もアリなの?それで釣れたとして面白いの?とか、ダークな精神世界のループに突入していく訳です・・・w

多分これまでに色んな先人達が同じ悩みに直面したんでしょうね。黒をベースにしながらも、釣り人の妄想力と、作り手側のエゴを詰め込んだブラックカラーは世界中に見られます(いや、多分ボク以外は釣れるカラーとして真面目に作ってると思います)。

ホロラメを最もイヤラしく光らせるには、下地はブラックが最も効果的です。そしてベリーの蛍光オレンジのコントラストは水中から見て、ものすごくハッキリと目立つでしょうね~。このカラーパターンはいくつかのメーカーが採用していますが、すごく理に適ってると思います。


そしてカッコいいブラックカラーと言えばMegabassさんですね。当時ゴーストアユ一辺倒だった日本のハードルアー市場に強烈な一撃をかまし、現行ルアーにプレミアがつくという異常事態を生み出したデッドリーブラックシャッドも、単なる真っ黒ではなくホロ箔の上からスモーク系のグラデをかけた、実に手の込んだカラーリングでした。

やっぱりみんな色々やりたくなるんでしょうね。真っ黒を塗って出した方が手間もコストも掛からないのに、それでも色々やっちゃう。でもそれがクラフトマンシップなんだと思います。「おおっこのブルーパールが超キレイ!釣れそ~!」とか思って貰う為に、手間もコストも惜しまない。だって趣味の世界ですからね。作る側も釣り好き、ルアー好きなんですww

そんな先人達の偉大な功績に習い、「黒が欲しい」と言うご要望にお応えするとなぜかこうなりましたw

水中で最も消失しやすい色が赤である事を利用し、光源の陰側にある時は殆ど黒。日向側にあれば茶色の反射と、状況や位置関係で違った見え方をするようなカラーにしてみました。もちろん配色はオリジナルではなく元ネタは古いバルサ製クランクベイトのカラー。茶色の調色のみウチのオリジナルです。黒に負けないくらいよく釣れるので是非試して欲しいカラーです。

そんなヘソ曲がりな僕ですが、釣り人としてブラックが嫌いという訳ではありません。たくさんのご要望はよく頂くので、そのうちブラックを出そうと思ってます。もちろん超釣れるカラーをセレクトしてお届けしますのでもう少しお時間ください。

Red Cedar

昨日のエントリーにも出てきたPOE’S SuperCedarシリーズ。
当時は琵琶湖、北浦共にビッグクランクと呼ばれるディープダイバーの釣りが流行していて、NormanのDD-22やBagleyのDB3等と並んで人気だったのがPOE’S SuperCedar#400でした。デッカいバスボートでデッカいクランクをバビューンと投げてゴリゴリ巻いてくる釣りは、「男らしい釣り」と呼ばれ皆の憧れでした。その痛いネーミングセンスと共に、90年代バブルを象徴する釣りだったように思います。
さて、バブル臭いSuperCedar#400の陰で、隠れた名品と謳われたのが、そのワンサイズ下の#300です。

ディープダイバー用のゴツいニーリングロッドでなくても投げやすく巻きやすいサイズと、ちょい投げで7~8ftという潜航レンジは、ショアのカバーにヒョイヒョイと投げていくのに都合が良く、正にシャローのジャンクフィッシングとオフショアディープの中間を占めるミディアムダイバーとして重宝されました。
岸からのアプローチを考えた場合でも、ちょっと沖めのブレイクライン、水深のあるテトラや足場の高い水門近くなど、すこしイメージを広げればいくらでも使う場所がありました。

POE’Sと言えば独特のカラーリング。日本人の感覚ではお世辞にも綺麗とは呼べないその仕上がりなのですが、その不思議な魅力とパックマンみたいなペイントアイが当時のアングラーを魅了しました。シンプルですがとても味のあるカラーばかりで、今見てもちっとも飽きが来ません。有名なラメラメラインナップも素晴らしいのですが、このブラウンバックチャートもかなりお世話になったカラーです。

そんな大好きなSuperCedar#300。このルアーとの出逢いがなかったら、レッドシダーでディープクランクを作ろうなんて思わなかったでしょう。昨年はバルサルアーが多かったですが、今年はレッドシダーも頑張って作っていこうと思います。

Only 2 Shooting

結構長い事、「クランクベイトはボトムノックさせる」ものだと思っていました。もちろんそれが必要なシチュエーションもあるのですが、「ボトムノックさせないと釣れない」と思ってしまうのはとても軽率で愚かな思い込みでした。このルアーに出逢うまでは・・・。


COTTON CORDEL CCshad
始めてこのルアーは買った時は思わず絶句しました。どんなにトゥルーチューンをしても、ちょっと速く巻くとあっちへフラフラ、こっちへフラフラ・・・。おまけに飛行姿勢が悪く、すぐ回転してしまう為飛距離も出ない。正直「つまんない買い物したな」とハズレを引いたような気分になったものです。
しかし、ある時、浅いパラ葦の中でスピナーベイトにバイトがあるものの、ブレードに触ってくるだけなのかフッキングに至らず、何か無いかとゴソゴソしている時にコイツと目が合いました。「どうせ無くしても惜しくないし・・・」そんな気持ちで投げたCCシャッドは、まだ水面に出たばかりの柔らかい葦に触れるとあっちへフラフラ、こっちへフラフラ、絶妙にスタックをかわしながら葦原をすり抜けてきます。やがてそれに誘われたグッドサイズが触りに来て、テールフック一本ながらランディングに成功するのです。
それ以来、北利根川はCCシャッドの独壇場。使用タックルはPhenix X-cal DRにABU2500C。そしてフォローの4inパドルストレートのテキサスリグがあれば一日釣りを楽しめました。後にTIFAから発売されたゼブラシャッドと共に、ショアのソフトカバースペシャリストとして愛用していました。
同じくソフトカバーに強いルアーにクラップシューター、シャローラビットがありましたが、CCシャッドやゼブラシャッドの潜航レンジは少しだけ深く、アクションも少し大きめなので、その分ゆっくり巻く事が出来ました。そしてなによりパタパタとしたアクションは魚から見てナチュラルなのか、コールドフロント通過後など、活性が著しく低下するシチュエーションでこそ効果を発揮しました。
当時、用語や概念などはありませんでしたが、思えばこれがフラットサイドクランクとの出会いだったのかも知れません。

そして次にハマッたルアーがこれでした。

POE’S RC-1
バスマスタークラシックを4度制したリック・クランの名を冠したレッドシダー製クランクベイト。
その派手な肩書とは裏腹に、当時のビッグクランクブームで人気を博したSuperCedar#400と違い、あまり話題にすら上らなかったこのルアー。しかし、岸釣りやアルミボートが中心だった僕にはこのルアーの方が身近な存在でした。
薄くて小さなボディに似つかわしくない大きな棺桶リップは、ソフトカバー、ハードカバー共に噛みが柔らかく、わざと一瞬引っ掛けて外すリアクションバイトという概念を教えてくれました。

どちらのルアーも、出逢ったのは20年以上前になりますが、当時の記憶はとても鮮明です。釣りは”自然”と”魚”が教えてくれる物だと思っていますが、釣り方を教えてくれたのはいつも、後に名品と呼ばれたルアーだった気がします。
これら2つのルアーとの出逢いが無ければ、ウチのロデオtype-Cが生まれてくる事はなかったでしょう。

魅惑のマダム

ここのところカラーネタばかりなので、久々ルアーネタです。


BOMBER Model7A
間違いなく、自分をクランクベイトに世界にどっぷりと惹き込んだ犯人の一人です。

僕の地元にある遠賀川で、ライトリグはおろかラバージグでもストレスを感じるのは、ショアから10m程沖合まで水没した竹林エリア。初めて一緒に釣りをする人は、そこにクランクベイトを投げ込む事自体に驚かれるようですが、本来クランクベイトはこういう込み入った場所を、速く、広く探る事を得意としています。ファットなボディはカバーに投げ入れやすい重さと浮力を両立させると共に、トリプルフックをカバーからプロテクトします。

そんな当たり前の事を教えてくれて、クランクベイトを使った事がない初心者も、優しく包み込むように一人前のクランカーに導いてくれるこのルアーを、僕の友人達は親しみを込めて「ななえさん」と呼び、慕っています。

この「ななえさん」、モデルAの特長でもあるウィローリップによって、縦に伸びるカバーの隙間をすり抜けるのがとても得意です。同じ長いウィローリップの6Aと比べてリップとボディとの相性が良く、バランスを崩し難いので、様々なタイプのカバーが点在するショアをストレスなく撃っていく事ができます。アメリカに「45°のバンクを見たらモデルAを投げろ」という言葉があると聞いた事がありますが、潜航角度やバランスから言ってこの7Aの事なのではないでしょうか。きっとアメリカにも「ななえさん」に男にしてもらったクランカーがたくさん居るに違いありませんw

僕のタックルボックスに入ってるモデルAは、基本全て「ななえさん」オンリーなのですが、琵琶湖に行く時だけは、もうひとかたお連れします。
それがこのかた

BOMBER Model 8Aこと「ハツエさん」です。

「ななえさん」よりももうひとまわりビッグマムな「ハツエさん」は、琵琶湖のビッグバスにぴったり。”エビ藻をすり抜け裸(グラスを一本も引っ張ってない)状態でカナダ藻をタッチ出来る”という事が、どれだけアドバンテージになるか想像に難くはないと思います。グラスエリアのクランキンで大事なのは飛距離よりも”グラスの抜けと噛み”でしょう(飛距離が必要なシチュエーションなら違うルアー使えばいいですしw)。そういう意味でこの「ハツエさん」、もっともマッチしたシチュエーションと言えるのではないでしょうか。

ただし、これを紹介した友人達には決まってこう言われます。

「ななえさん」は萌えるけど「ハツエさん」はちょっと無理だ・・・

きっとかなり深みにハマった人(マニア)向けなんでしょうねwww