日別アーカイブ: 2013年1月26日

黒いルアー

ルアーを作る仕事をしていると、色んなカラーリクエストを頂くわけですが、その中で最もサガるというか、塗る気が起きないのが実は「ブラック」ですww

いや、釣れるのは知ってますよ。水中で最も目立つ色のひとつですし、マッディとか、夜とかそんな条件付けなくてもよく釣れるのは、ラバージグなどのカラーを見ても明らかです。
それでも、ルアー作りを生業にする人間にとって、ブラック1色というのはどうにも抵抗があり、「意外と真っ黒って釣れるんですよね」とか、「今度黒塗って欲しいんですけど」とか言われると、余計に塗りたく無くなりますw

その理由として、まず第一にテンションがまったく上がりません。
そりゃ簡単ですよ。真っ黒ですからね。たったの1工程です。普通のカラーで言ったらベースの白吹いて終わり、みたいな・・・。
この仕事してると、釣れる色を開発するのはもちろんですが、買ってくれた人が「おお、ここらへんどうやって塗ってるんだろう?」とか、「これって昔あったあのカラーの塗り方だよな」とか、目でも楽しんで貰えるよう、日々新たなテクニックを模索して「お!新テク発見♪」とかやってる訳ですよ。そこに「ただの真っ黒でいいんでチョチョイっと・・・」と来られると思わずズシ~ンと・・・。
そんなチョチョイと塗れるカラーを販売するのってプロとしてどうなの?とか、普段はなりを潜めている安いプライドまでが、ここぞとばかりに首をもたげていっぱしの顔する訳ですよ・・・。
ま、釣り道具ですからね、釣れるかどうかにしか興味ないと言われればそこまでで、作る側の都合なんて大した意味はないと思うんですが、黒一色で釣れるなら、青一色とか、黄色一色もアリなの?それで釣れたとして面白いの?とか、ダークな精神世界のループに突入していく訳です・・・w

多分これまでに色んな先人達が同じ悩みに直面したんでしょうね。黒をベースにしながらも、釣り人の妄想力と、作り手側のエゴを詰め込んだブラックカラーは世界中に見られます(いや、多分ボク以外は釣れるカラーとして真面目に作ってると思います)。

ホロラメを最もイヤラしく光らせるには、下地はブラックが最も効果的です。そしてベリーの蛍光オレンジのコントラストは水中から見て、ものすごくハッキリと目立つでしょうね~。このカラーパターンはいくつかのメーカーが採用していますが、すごく理に適ってると思います。


そしてカッコいいブラックカラーと言えばMegabassさんですね。当時ゴーストアユ一辺倒だった日本のハードルアー市場に強烈な一撃をかまし、現行ルアーにプレミアがつくという異常事態を生み出したデッドリーブラックシャッドも、単なる真っ黒ではなくホロ箔の上からスモーク系のグラデをかけた、実に手の込んだカラーリングでした。

やっぱりみんな色々やりたくなるんでしょうね。真っ黒を塗って出した方が手間もコストも掛からないのに、それでも色々やっちゃう。でもそれがクラフトマンシップなんだと思います。「おおっこのブルーパールが超キレイ!釣れそ~!」とか思って貰う為に、手間もコストも惜しまない。だって趣味の世界ですからね。作る側も釣り好き、ルアー好きなんですww

そんな先人達の偉大な功績に習い、「黒が欲しい」と言うご要望にお応えするとなぜかこうなりましたw

水中で最も消失しやすい色が赤である事を利用し、光源の陰側にある時は殆ど黒。日向側にあれば茶色の反射と、状況や位置関係で違った見え方をするようなカラーにしてみました。もちろん配色はオリジナルではなく元ネタは古いバルサ製クランクベイトのカラー。茶色の調色のみウチのオリジナルです。黒に負けないくらいよく釣れるので是非試して欲しいカラーです。

そんなヘソ曲がりな僕ですが、釣り人としてブラックが嫌いという訳ではありません。たくさんのご要望はよく頂くので、そのうちブラックを出そうと思ってます。もちろん超釣れるカラーをセレクトしてお届けしますのでもう少しお時間ください。