既にご覧になった方も多いかも知れませんが、
今シーズンの全日程を終えた桐山孝太郎プロがエリー湖畔でその心境を語っています。
今年は桐山にとってあまり良いシーズンではありませんでした。
昨年エリート初優勝を決めたレイク・エリーを始め、
得意とする北部エリアの試合が全てなくなり、かなりの苦戦を強いられました。
そしてエリートシリーズ終了後はそのままオープンに出まくり、
見事2位でクラシック出場権を獲得しました。
これで地元アラバマで開催されるバスマスタークラシック2010に出場出来る訳ですが、
桐山にとって決して有利な条件とは言えません。
なぜならアラバマ在住のプロは桐山以外にも多く居ますし、
レイレイクは必ずしもビッグゲインが狙えるレイクではありません。
あのショボいレイグラスを巡って、世界一の猛者達が凌ぎを削るのが想像できます。
しかし後ろに見えるレイク・エリー。
ミシガン、オンタリオ、スペリオール、ヒューロンと並ぶ五大湖の一つです。
この水系全域は冷帯湿潤気候と呼ばれ、
かのシカゴ(イリノイ)の別名がWindy Cityと呼ばれる事から判るように、
とにかく風が吹き荒れる湖です。
この宇宙からも見える大きな湖に風が吹けば、当然信じられない程荒れる訳で、
それは一番小さくて浅いエリーとは言え、日本人が経験した事のないレベルです。
初めて桐山の自宅を訪ねた時、エリーから帰ったばかりの桐山のボートはボロボロでした。
エレキのバウンスバスターは吹き飛び、デッキ各部のハッチはちょう番もロックも外れガタガタに。
聞けばレイクエリーの荒れ方は半端ではなく、とてもプレーン出来るものではないそうで、
数メートルある波を文字通り乗り越えながら、何時間も掛けてスポットを目指すのだそうです。
(以前別のメーカーのボートに乗っていた頃、
プラを含めた一週間でガンネルビスが全て折れて廃艇になった事すらあるそうです。)
びっくりしたのはエンジンで、なんとキャビテーションプレート(スケグではなく)が欠けてしました。
「そんなに浅い所を航行するのか?」と聞くと、
「違うよ、普段は水深あるんだけど、荒れると波の低い所は水が無くてボトム打っちゃうんだよ」と。
それほどまでにボートを苛め抜くレイク・エリー。
当然それを操る人間への負担も半端ではありません。
冬の日本海のような波の山にボートで登っていき、数メートル下に叩き付けられる。
普通の人間なら手足が震え、救助を待つような状態です。
何度も船ごと波に押し戻され、それでも前に向いてアクセルを踏む。
既に操船テクがどうとかよりも、いかに根性が座っているかという世界です。
事実、昨年この湖で優勝した桐山を祝福に来たKVDは、
「お前の方がチ○コがデカイ!」と肩を叩いたそうです(笑)。
今回アップされた動画では、そんな波との格闘による疲れと、
シーズンの張り詰めた状況から開放された安堵感を感じる事が出来ます。
友人なら当然「大丈夫か?」「無理するな」と声を掛けたい所ですが、
それは奴に「バスプロを辞めろ」と言ってるのと同じです。
それでも、今年も無事にシーズンを終えてくれた事に、ただただ安堵の二文字です。
コータ!お疲れ!