月別アーカイブ: 2009年12月

ワームフック

今現在、これが無いと釣りにならないと思っているタックルのひとつに2種類のフックがあります。
それがこの「バルキースピア」「スキニーリップ」です。

この2種類のフックは自分が元々市販のフックを全てチューンして使っていた形状を、
OWNER社で製品化してくれたもので、自分の釣りにはなくてはならないフックです。
まあ、ここ最近釣りを始めた人の殆どの人は「こんなんで掛かるんか?」という反応をしますが、
不思議と20年以上のキャリアを持ったアングラーからは「ほう!」と簡単に受け入れて貰えます。
ここで20年以上のキャリアと言ったのは訳があります。
国内のバス用オフセットフックが現在の形になったのはおよそ15~6年前だったでしょうか?
当時はその新形状が非常に利に適った物として、殆どのメーカーがその形状を採用し、現在に至ります。
もちろん自分もその恩恵に与ろうと新コンセプトのフックを数年使っていたのですが、この頃から妙にワームのフッキングが感じるようになりました。
いわゆるショートバイトだの、スッポ抜けだのが頻発するようになったのです。
従って、少しでもフッキングの良いオープンフックのジグヘッドを使う事が増えたりもしていたのですが、ある時「これ、フックじゃね?」と思い、昔使っていたフィリップバナナ(TIFA)のオフセットフックを再度使ってみました。するとミスフックは減り、それほど強いフッキングを行わなくてもバラしが減っていきました。
しかし、その頃にはもう、昔の形状のフックは既に市場から消えており、手持ちも少なくなっていきました。
それならと現在の形状のフックをプライヤーで曲げてから使う事を思い付きました。
もちろん結果は想像した通りでした。
それ以来、新しいフックをパッケージから出すと、必ずプライヤーで曲げてから使うようになり、それに興味を持ったOWNERさんが新製品として採用してくれるなったという訳です。
現在のフックしか知らない世代にはこうした話しはにわかには信じて貰えないと思います。
しかし、発売してすぐに「アレいいよ!」と言ってくれた方や、若い世代であっても実際の釣りを通じてそのコンセプトを理解してくれたアングラーが居たのは非常に親近感を覚えます。
やっぱり皆さん自分と同じようなストレスを抱えていたんですね~。
このフック、普通(あえてそう呼びます)のようにフックポイントを一度背から出して、先端を再びワームに刺すようなセッティングはしません。フックポイントは完全にワームに埋めて使用します。

こんな感じでフックをセットします。
それでも普通のフックより弱い力で魚の口を貫通します。
口唇横のカンヌキではなく、手前に魚が走っても上顎の口内にガッチリ掛かります。
勘の良い人や経験値の高い人は簡単に気づくようですが、これらのフックはストレートフックと同じ効果を持っています。
アメリカのプロ達の影響もあり、最近ストレートフックが再び見直されていますが、ストレートフックの良い部分は「ネムッていない」という点にあると思います。
まるで壁面のような大型バスの口内にポイントを掛けていくには、引っ張りあった状態でポイントが外を向く必要があります。アイに向かって真っ直ぐ伸びているようなポイントでは、バレットシンカーによってこじ開けられた口唇の隙間から、簡単にスッポ抜けてしまうでしょう。
バルキースピアは現在のフックの良い部分である懐の深さ(バルキー系ワームに必須の条件)とストレートフックの外向きポイントを融合。
スキニーリップはストレートワームやスピニングタックルに対応するよう、ポイントだけを外に向けた設計です。
どちらも魚の重さや力を使えば、リールの巻きだけでフッキングしてしまうような貫通力を持っています。
テキサスリグのスッポ抜けで悩んでる人は是非使ってみて欲しいフックです。
ちなみにスキニーリップの「リップ」とは、アメフトのラインマンが使うテクのひとつで、
相手の腕や上体を「カチ上げる」方法です。
OWNERの担当者にアメフトでディフェンスラインやってるのが居て、
その顔を見た時に思い付きました。
そのご本人はかなりバルキーですけどね・・・(笑)

ハウスキーパー

先日、娘(小2)が学校から帰ってくるなり、こんな質問をしました。
「ねえ、ショットガンは?」
もちろんウチにそんな物騒な物はありません。
っていうか、一体どこでそんな言葉を覚えたのか?
アニメ?漫画?それとも学校でそんな話ししてんの?
最近じゃ日本でもセルフディフェンスにショットガン常備?
夜中に物音がしたら父親としてガウンにショットガンで家の外に飛び出さなきゃいけない?
そもそも何故に散弾銃でなくてショットガン?
目を白黒させながら「そんな物はない」と答える父親に、娘はさらに質問します。
「じゃあハンドガンは?」
・・・・・・・・・・・・・     はぁ?
いやいや、だいたいハンドガンってのはアメリカでも所持するには許可証が必要で、
登録するには2週間とか掛かる訳だし、今やニューヨークなんかの都会では所持も出来ない訳で・・・
じゃなくて!
つーか何コレ?どっきり?マイケル・ムーアが言ってた「アメリカみたいになるな」ってこの事?
そもそも何でもっと子供らしく「テッポー」とか言えんのかと。
ビックリするような質問に動揺した父親はこう答えました。
「ア・・・アサルトライフルならあるよ・・・」

「ふ~ん」
こうして娘はまた新しい単語を覚えました。
父親って難しい・・・。

世界基準クランク

本日知り合いの工房に行く途中、いつもお世話になっているハニースポットさんに寄ってきました。
すると友人の内村チーフ、いつものように入荷商品と格闘中・・・

中身は大量のファットフリーシャッド

ファットフリーシャッドと言えば、当時最強を誇ったディープクランク、
POE’Sセダーシリーズを妥当する為に、プロドコが威信を賭けたクランクベイト。
近年ではティミー・ホートンによってエリートシリーズでも活躍を目にします。
自分もよく使うルアーですが、メキシコでも非常に人気が高いと聞いてます。
正にワールドスタンダードなクランクベイトです。
ファットフリーのアクションはそれ程ワイドではないのですが、
テールを振る力が強いというか、非常にパワフルな波動を生み出します。
また、固定重心でありながら、飛距離も充分なので、
北風の吹き荒れる寒い時期でもストレスフリーで釣りをする事が出来ます。
それにしても、街はクリスマスシーズン到来なこの時期に、
リアルアメリカンクランクをガッツリ仕入れるあたり流石内村!
クランカー魂と・・・愛を感じました。

既にこれだけあるファットフリーコーナーにプラスしてアレですからね・・・
「全シリーズあります!」と豪語するだけの事はあります!
もちろん早速いかせて頂きました。
結局クランクばっかり買ってるんですけどねw

クランキンリール

自分の釣り、というよりタックルの認識を大きく変えてくれたリールがあります。

それがこの「スコーピオン1000Mg」なんですが、
このリールに出会うまで、リールで重要視する部分は飛びのスムーズさと、
巻き上げの滑らか、そして耐久性でした。
もちろん少ない力で飛ぶに越した事はありませんし、耐久性は大事です。
出来れば剛性の高いボディで高回転のブレを抑え、
それによる耐久性が全てであるように思っていました。
当時のフラッグシップはコンクエストDC、そして名品と謡われたアンタレスARがありました。
しかし、「インストラクターに見て貰うような価格ではないんですが・・・」と遠慮がちに渡されたこのリールを何度かキャストした時、これまでのシマノリールには無い衝撃が襲ってくるのを感じました。
巻き感度が異常に高い・・・
それまで使っていたコンクエスト100やアンタレスARに比べ、
クランクベイトが発する振動、ボトムやカバーとのタッチ、
ウィードの一本一本を感じるようなセンシティビティーを持っていました。
これ、ギアの素材変えた?
思わずそう訪ねてしまった程でした。
テスト用に用意した様々なロッドのうちで、
シャウラのようにグリップの重いロッドや、弾性の高いカーボンロッドはそれ程顕著ではないものの、
当時使っていたワンオフの6,10ftグラスクランキンロッド(後のFDコンセプトモデルとなったテストモデル)では、明らかな違いとして同行した技術者にもそれが判る程の違いでした。
発売後、このリールは自分のメインリールとなり、クランキンだけでなく、ピッチンフリップやジャークベイト、スピナーベイトにも使用し、ライトハンドル6台、レフトモデル4台を所有するに至り、
ファイナルディメンションシリーズのテストではメインリールとして活躍する程の偏愛ぶりになりました。
当時は「ギア非が高い程鋭敏になる」という風潮もあったのですが、スコーピオン1000Mgと同じジュラルミン製ギアを搭載したアンタレスDCでは、このクランクベイトへの高い感度を示したのはギア非5,8:1のローギアモデルでした。
ここで判ったのはギア非そのものではなく、ハンドル一回転における最大巻上げ長が65cm前後である事。
それがグラスロッドを用いたクランキングで最も鋭敏なタックルマッチングではないかという事でした。
このマッチングでタックルを組む限り、経験の少ない新入社員であっても琵琶湖南湖でのグラスクランキンを容易な物にし、藻ダンゴ状態になる事無く、クランクベイトを泳がす事が出来ました。
自分達の中でクランクベイト=ローギア神話が崩壊した瞬間です。
これにより、メタニウムシリーズの新機種であるメタニウムMgは、単なる’05メタXTのMg化から大きく姿を変えていく事になりました。

ボディ全体の高剛性化と極限の軽量化、人間工学に基づいたボディデザインが成され、同時に巻き感度をアップさせるあらゆるエンジニアリングが施されていきました。
特に気を使ったのがこの部分。

後のレフトモデルやDCユニットの搭載も視野に入れた上で、
3フィンガー、2フィンガーも含めたあらゆる方向へのロッド保持を考慮したパーミングプレートです。
これらのリールの誕生によって、クランクベイトの釣りが自分の中で劇的に変化しました。
これまで、シルキーで滑らかな巻上げにあっても、ティップが曲がっていくまで何が起きたか判らない状態にあっても、より軽く、ストレスフリーで巻き続けられる事が身上と考えていたリールが、
ロッド以上に鋭敏で、ルアーの泳ぎの質まで見極められる存在になった事。
ウィードの種類や密度を感じとり、一秒先を見越して巻く事が出来るようになった事。
魚が食いついてくれるのを巻きながら待つ釣りから、自分で間を作って食わせにいけるようになった事が、どれだけ大きな力になった事でしょう。
その後発売されたアルデバランMgは最後までギア非のテストが難航しました。
で、結局、このサイズで考えられる最大巻上げの7:1と、
市場が望む小径スプールのローギア5,8:1という2機種が発売されました。
自分的にはこのリール、32mm径のスプール内に直径30mm程しかラインを巻いていません。
これによって、最大巻上げ長は約65cm。
メタMg等と同等の巻き上げ長になるという訳です。
アルデバランはスプール径が小さい為、軽いルアーでもレスポンスが良く、
ライトラインや小さなルアーの使用に抜群の適応能力を持っています。
スモールクランクやフラットサイドの使用が多い冬のシャローでは重宝します。

また、先日、友人である「迷ぴあにすと」さんにお願いして、湖北である実験をして貰いました。
「果たしてローギアリールは本当にゆっくり巻けるのか?」というテーマで、
スピナーベイトのスローロールを含む、巻物系のルアーでカメラと共にレンジを追いかけて貰いました。
結果としては、「ほぼ予想通り」という感じでしたが、
ANGLER’S CHANNELに動画と一緒にコラムUPしてくれてますので、興味ある方は是非。
『迷ぴあにすとのWhat’s a Wonderful World』
これまで想像していた事、単なるスペックから予想出来る事とはまったく違う結果が待ってますよ~。
正に「Don’t Think! Feeeeeeeel!!」って感じですw

ニシネルアーワークス

自分には師匠というか、ルアー作りを始めるきっかけとなった人物が居ます。
それが現Nishine Lure Works代表の西根博司さんなのですが、
出会った頃はシマノ社のルアー、トリプルインパクトのテストをしていて、
西根さんがコンセプトモデルのデザイン、自分がテストアングラーという立場でした。
その頃の西根さんは既にドリームラッシュという伝説のブランドを残しており、
初代アンジュレーターなど、いくつものシマノルアーデザインも手掛けていました。
別にこの人を追いかけたいとか、自分もこの人みたいにルアー作りをしてみたいとか思った訳ではありません。
ただ「欲しい物があるから作る」、そんなアプローチがある事を、
言葉ではなく、行動で教えてくれた人です。
そうして、それが当然であるかのようにルアー作りを始めました。
理由は「欲しい物があったから」。
テストが2年目を向かえた夏、雑誌の取材もあり、西根さんが遠賀川に遊びに来てくれました。
一緒に釣り場で色々な話しをし、釣りを楽しみました。
2日目を向かえ、ふと西根さんが自分のタックルボックスを開けました。
生まれて初めて見ました。
板や工具といったルアーの材料を持って釣り場に来てる人を・・・!
そしておもむろに一枚の板を切り始めると、あれよあれよとルアーの形になっていきました。

時間にして30分程度だったでしょうか・・・
瞬間で目止めして泳がせる状態になったルアーを手渡されました。
「フラットサイドってこんな感じですかね?」
そういって笑う西根さんの顔を、自分はどんな表情で見つめていたのでしょう・・・
鱗こそ無いものの、いつもの西根顔をしたクランクベイトがそこにあり、
驚いた事に鼻の穴までもが開いている・・・

この頃既に駆け出しながらルアー作りを始めていた自分ですが、
そうでなければ理解出来ない部分もあったと思います。
滑るように走る切り出しナイフによって、驚くべきスピードで切削されていく原木。
さらに驚かされたのは、その造形の殆どをナイフで行い、サンドペーパーを殆ど当てなかった事。
正確で美しい曲線を殆どナイフ一本で作り上げていった事でした。
今でもこの30分間を鮮明に思い出す事が出来ます。
この直後、このルアーで釣れた魚よりも鮮明に・・・
たった一度だけ見せてもらった奥義を反芻しながら修行の日々を過してきたかのように、
今でもナイフを持つ度にこの瞬間を思い出すのです。
そして頂いたこのルアーは大切に、自分の宝物として、
時には戒めとなり、時には未来を照らす灯火となり、
いつも工房で自分を励まし続けてくれました。
先日の火災で、工房から持ち出せた、たった一つの宝物。
西根さんから分けてもらったビルダーとしての魂です。
遠くカナダの地で今もその火を熱く燃やす西根さん。
デンプシーテールを生み出した後も、その創作意欲ははちきれんばかりのようです。

既に新作のデザインに取り掛かってるようで、こちらの想像も膨らみます。
ビーツァM7のアンダーレンジを行くクランクベイト。
思わず「よっ!待ってました!」って感じです。
今からとても楽しみでなりません。