FDとTCRの違い。

最近とても多い質問に「FDとTCRはどう違うの?」というのがあります。

素材やメーカーは別として、同じクランキン用で、6’10″というレングス。
しかもL,ML,Mと3種類のパワー表記となると、以前シマノさんで手掛けた610クランキンシリーズとどう違うのよ?
というご質問が多いのは、実にごもっともかなと。

さて、そんな2つのシリーズを比べた場合、「好みは別として、用途は同じ」というのが僕の感覚です。
以前シマノさんでは、UDファイバーコンポジットを使用したロッドをデザインしましたが、
今回NFCではピュアカーボンの低弾性を選択しました。
4軸やXアシスト等の二次補正は無しです。
NFC自慢の巨大ローリングマシンとこの分厚い巻きがツブレやネジレといった、
低弾性ブランクのマイナス要素を徹底排除し、
とてもスムーズで、プログレッシブに曲がるブランクを構築してくれます。

まあこれまで僕がやってきた仕事、説いてきた理論とはまったく逆のスタンスのプロダクトですが、
それでもFDの理論構築を行った頃よりも、さらに踏み込んだテストを行ってきたつもりです。
低速重視のルアーから超高速リトリーブ、様々な環境でのテストを連続で何日も行って検証してきました。

今回のTCRシリーズの最大の特色はキャスタビリティ。
グラスロッドとは比べ物にならない飛距離と、スイートスポットが広くて投げやすいテーパーは、
多少フォームやタイミングが狂っても抜群のキャストコントロールを誇ります。
オーバーヘッドやサイド、アンダーはもとより、ピッチングで近距離を撃っていく事も可能です。

また、グラスに比べて軽くて細いので、強風時のキャストも楽で、長時間の釣りでも疲労感が少ないです。
これだけキャスタビリティを向上させると当然、カリッとしたピンピンと張りの強い調子を思い浮かべると思うのですが、
これがなぜかモッチリと粘り、まるでファイバーグラスのようにカバーを舐め、キスバイトを絡め取ります。

正に「投げた感じはカーボンで、巻いた感じはグラス」。
そして、低弾性カーボンロッドにありがちなダルッとした重さは皆無であり、
シュパッと投げて、ヌルッと巻いてくる事が出来ます。
そしてひとたび魚を掛ければ、相手の動きを殺しながらトルクフルに寄せてきます。
これがNFCのブランク愛用者がよく口にする「気持ち悪い」という表現の所以であると思います。

僕自身、シマノさんでやってきた事の模造品をゲイリーの元で作るつもりはありません。
かといって自分が求めてきた物は一時のブームではなく、自分の経験値を反映した物だと思いたいのです。
長さやパワー表記など、FDの610シリーズを踏襲する部分はありますが、「用途は同じだが、完全に別物」です。

随分昔になりますが、以前とある携帯サイトの質問コーナーで、
「僕はグラスロッドが嫌いだ」と返答した事があります。
そんなグラス嫌いの僕でも使えるグラスロッドを作ろうとFDを作りました。
そして今度はグラスコンポジット並みのフレキシビリティを持ったグラファイトロッドを作りました。

センシティブさとトラッピング能力を併せ持ったテクニカルクランキンロッド。
是非お手にとって確かめてみてください。
FDを使っていた人も、クランキンロッド自体が初めてという人も、
NFCブランクならではの不思議な感覚に感動して頂けると確信しています。