月別アーカイブ: 2013年10月

グラファイトロッドの父を訪ねて6

4日目の朝、オレゴンの雄大な地平線から昇る朝日を、車の中から眺めていました。

今日はロジスティックのスティーブと釣りです。

このスティーブという人が非常に面白い好人物で、低いトーンで単語をひとつひとつ区切りながら、ゆっくりとしゃべります。
イギリス人みたいな大きな鼻と丸メガネ姿もコミカルさに拍車を掛け、なんだかコメディ映画の牧師みたいな感じです。
なんだか教会で牧師様のお説教を聞いているような眠気を誘うのですが、頑張って起きていました。
電話の出方がまた面白くて、「This is Steve speaking. May i help you?(もしもしスティーブだが、何かお困りかな?)」とくる。
普通知り合いの電話にそんな言い回しで出るでしょうかwww
品があって、ジェントルマンで、でもどこかズレてて・・・そんなスティーブをすぐに大好きになってしまいました。

途中、なんとスティーブが昔、日本のTVドラマ「オレゴンから愛」を観た事があると言い出した時は驚きました。
まあ何せ、こちらも今回来るまでオレゴン州に対する予備知識は「オレゴンから愛」のみでしたから、なんというタイムリーな話題だろうとwww
そこからスティーブの話は昔、戦時中に迫害を受けた日系アメリカ人の話になり、自分と同世代の日系人がどれだけ苦労したかというような話をしてくれたのですが、まあ難しい話なので”なんとなくそんな感じの話”という事しか解りませんでした。
まあでも、この辺りで収容所というと、オレゴンとカルフォルニアに州境あたりにツールレイクとかいうのがあったと記憶してましたので、なんとなくその辺りの話だったのかもしれないです。
ちなみにオレゴン州ポートランドは、戦後かなり早い段階で北海道と姉妹都市になったりと、ワシントン、カルフォルニアと並んで日本との交流が深い土地柄だったと記憶してます。

まあ、そんなこんなで車は4時間程走りw、途中キャベラスで合流したカイルと共にMcKenzie River(マッケンジーリバー)に到着しました。
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今日はカイルの操船するこのドリフトボートに乗って、レインボートラウトをフライフィッシングで狙います。
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ドリフトボートは動力が一切ついてなく、オールのみで激流の中をコントロールするアルミ製のボートです。
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カイルはこのドリフトボートを使ったガイドであり、優れたアングラーでもあります。
実はNorth Fork Composites社はこのドリフトボートのオールの製作も行っており、カイルはこのオールとフィッシングロッド両方のプロスタッフでもあるのです。

フライフィッシングで狙う位なので、結構のんびりどんぶらこの旅を想像してたのですが、カイルの「座れ!」の号令と共に激流に突入し、少しでも水が巻く所を見つけると「投げろ投げろ~!」と、海兵隊にでも入隊したような忙しさです。
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しかし魚影は濃く、元気でヒレピンの美しいレインボー達が遊んでくれます。
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流れの中どんぶらこ状態なので、かっこよくホールド出来ませんがwww

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生粋のフライフィッシャーであるスティーブおじさんも、表情は読み取り難いですがご満悦のようで、歌の一曲も出て来そうな感じです。

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しかし、今回のメンバーの中で、最も美しいループを描いていたのがブルーピークス堀口さん。
年季の入ったスティーブよりも綺麗な、惚れ惚れするようなフォルスキャストでドライフライを操ってました。
なんかジェントルマン度で完全に負けている・・・こりゃ帰ったら特訓しかない!と決意しましたw

ところで、この川の畔には雰囲気のある住宅や別荘が立ち並んでいるのですが、
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なんかやたらと水辺に近いです。
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ここんとこ、ゲリラ豪雨の被害で大変な日本の感覚だと、思わず大丈夫?って聞きたくなるような建築です。
こんな立派な別荘(?)が、アウトサイドベンドにある・・・水害で倒壊するイメージしか湧かないんですが・・・。
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聞けばこの辺り、気候はとても安定していて、台風やトルネードとは無縁なんだとか・・・。
それなら危険はなさそうです。
まったく羨ましい・・・。

結局、何度もオマツリしてスティーブや堀口さんのティペット(リーダー)をグチャグチャにして迷惑かけまくった訳ですが、釣果の方は5~6本釣れて大満足でした。いいの4本くらいバラしましたがいいんです。とっても楽しかったので。

マッケンジーリバーのドリフトボートフィッシング、予想を遥かに上回る楽しさでした。
というか僕には勿体ない最高に贅沢な時間を過ごさせて貰ったと思います。
なんだかまだまだ足りない!そんな気持ちからか、岸に上がってからも暫くロッドを振ってましたwww

帰りもスティーブの長~い話を聞きながら、たっぷり4時間オレゴンの雄大な景色を楽しみましたww
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グラファイトロッドの父を訪ねて5

3日目はなんだかえらい早くから叩き起こされ、車に詰め込まれます。
ポートランドで昨日一緒にスモールマウス釣りしてくれたエドと合流し、真っ暗なハイウェイをひた走ります。
暫く走ったのち、エリックと合流しさらに田舎の方へ・・・
ようやく車が停止した頃には、辺りはすっかり明るく、舗装路ですらない山の中。

目の前にはこんな看板が・・・。
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ここはオレゴン州の指定公園の一部で、一般の車が入って良いのはここまでで、ここから先は切り出した樹木の搬出用トラックや、管理業者の車など特別な許可を受けた車しか入る事が出来ません。

つまりここから先は歩きですww
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North Fork Composites社ジェネラルマネージャーのジョン曰く、最もエキサイティングなゲームフィッシュのひとつが”スティールヘッド”で、これまで釣ったどんな魚よりも面白いそうです。バスよりもボーンフィッシュよりも、キングサーモンよりも・・・。「是非スティールヘッドの凄さを味わってみて欲しい!」そんなジョンのご厚意によって、今回の旅のメインイベントとも言えるスティールヘッド・チャレンジが始まりました。

スティールヘッドはいわゆるレインボートラウト(ニジマス)の降海型。大きな個体になると20ポンドを超えるものも居るとか。
遡上中であってもルアーやフライに果敢にアタックしてくる事と、その強烈なファイトから地元でも非常に人気のあるゲームフィッシュなのだそうです。
これまで多くの魚を釣ってきたであろうジョンやゲイリーにそこまで言わせる魚を是非この目で見てみたい・・・!
ジョンの奥さんクリスアンの作ってくれたランチをリュックに詰め、クリスアンに借りたウェーダーを履いて、みんなの後を必死で追いかけるのです!ww

今回の釣り場オレゴン州のSiletz River(シレッツリバー)には、この時期良いサイズのスティールヘッドが遡上してくるそうで、この川に詳しいエリックが色々と詳しく教えてくれます。
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暫くジョンとエリックのレクチャーを受けていると、ジョンのロッドが弧を描きます!
魚の重々しい引きに引っ張られるように岸沿いの崖を登ったり降りたりして魚を追い掛けます。
(なるほどこういう釣りなのね・・・)
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暫く下流に下った所で大きな崖に行く手を阻まれ、暫く抵抗するもあえなくラインブレイク・・・。
(っていうかこんなのでスティールヘッドとか獲れるの?)という疑問さえ・・・
そんなこちらの懸念を悟ったのか、「スティールヘッドはまず掛かると上流に向かって走り、激しくジャンプするんだ」とジョン。
「今のは多分シュヌック(チヌーク)だ・・・」とエリック。
なるほど、ちゃんと習性を理解して理に適った釣り方で狙ってる訳ね、と独り納得。
「10時間やって1バイトあるかないかの釣りだけどなww」とエド。
思わず「はあ?」と聞き返したあと、「マジか・・・」と天を仰ぎましたが、
なぜか自慢気な目の前の大きな子供達に「やっぱ釣り人は万国共通だな」と思いました。

そしてジョン曰く、「強烈なファイトをする魚だから、ロッドはしなやかでトルクフルな物じゃないといけない。スティッフな(硬い)だけのロッドだと簡単にバレてしまうからね。ロッド全体で魚のファイトを受け止めて吸収しないといけないんだ。」
(ところどころ自信ないですが、たぶんそんな感じの事を言ってたと思いますww)
North Fork Composites社の原点であり、そのブランクの特長そのものを、その根幹の部分を体感できるかもしれないと感じ、なんだか武者ぶるいのように身体が震えました。

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それからポイント移動を繰り返しながら、とにかくひたすら歩きます。
早朝4時から3時間も車に揺られてきた割に元気で居られるのは、目の前の自然がとても綺麗で、見る物全てが新しいからです。
見える範囲全てに群生するのはレッドシダーとメイプル。
レッドシダーはウチでもロデオドライブやB7Deepなんかに使ってる材料。
でも、普段触ってるのは製材されて乾燥した木材であって、生きてるレッドシダーをこんなにたくさん見る機会はそうそう無いのです。
大きな大きなレッドシダーに手を添えて、匂いを嗅いでみたりする姿は相当滑稽だったかも知れませんww

そして表面が超モッシーになってる巨木はメイプル。
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当然葉っぱはグローブのように大きいです。
なんだかスターウォーズに出てくる緑の惑星エンドアに迷い込んでしまったような気分です。
(さしずめエドがチューバッカww)

そうそう、時々ログを満載のトラックに轢かれそうになる道沿いを歩いていると、こんな物が置いてあります。
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なんだろう?と思って観察していると、すぐにジョンが説明してくれました。
「大きな雨が降った時に、泥濁りが川に流れ込まないようにコイツで濾過してるんだよ。」
なんというか、凄い発想だなと。
これなら自然を壊す事なく、道を作った事のダメージを軽減出来る。
そういえば入口あたりにこんなのが山のように積んであった。
状態を見て、隣にあったトラクターでこれを追加設置して回るんだと・・・。
なんだか当たり前のような事にいちいち感心して感動するアホな日本人になってましたwww

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さてさて、歩いて歩いて、ひたすら歩いて、崖を登って降りてのフィットネス。
ここまで釣れたのは、まだパーマークもくっきりの可愛いレインボー。
みんな諦めずに10時間に1回あるかないかのバイトに集中し続けたのですが残念ながらノーバイト。
「魚はハングリーじゃないらしい」とエリック。

結局、この日僕らの誰の竿にもスティールヘッドが掛かる事はありませんでした。
でもみんな超楽しくハッピーだったのは釣り人なら解りますよね♪
美しい景色と空気の中で食べたクリスアンのサンドウィッチは最高に美味しかったです。

そして長い長い道を戻って車の置いてある所へ・・・
流石にみんな疲れてるかなと思ったら、「俺の偏光グラスの方が見えるぜ!」と品評会スタート。
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やっぱり釣り人の阿呆っぷりは万国共通ですww

今回残念ながらスティールヘッドをキャッチする事は出来ませんでしたが、次回またチャレンジするという目標を持つ事が出来ました。
帰り支度をする僕らの脇を、「釣れたかね?」と肩に良型のスティールを肩に担いで通って行ったナイスミドルのドヤ顔をバネに、次回もまたこの地に帰ってくる事を約束したのでした。

人生の宿題と、釣友との約束がまた増えてしまいましたww

グラファイトロッドの父を訪ねて4

2日目の午後はかの有名なコロンビアリバーでスモールマウスを狙います。
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ボートを出してくれたのはエド。
トーナメンターであり、ボディビルダーのマッスルアングラーですww

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大河コロンビアリバーの超立派なボートスロープ、こんなスゴいのがなんとパブリシティ。こういう所がやっぱりアメリカって凄いなって思う訳です。
日本だとどこかの関係省庁が管理してて、特別な許可が必要だったり、特定の職業の人が独占していたり・・・。「ちゃんと税金払ってますけど?」と言いたくなる。
もちろんこちらでも高いフィッシングライセンスは必要です。でも、綺麗で楽しくてコンフォータブルな釣り場で遊べるなら、みんな喜んでライセンス買うでしょ。やっぱ遊ぶ事に関してアメリカには敵わないなとつくづく思いますww
ちなみにパーキングは有料です。でも1日たったの$5.00。デッカいトラックにボートトレーラー引っ張っててもお値段変わらずです♪

大都会ポートランドを流れるコロンビアリバー、先述したようにアクティビティの施設がてんこもり。
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湖畔の家にバスボートサイズの船が入るボートドックは南部でもたくさん見て来ましたが、4~50ftのデッカいクルーザーがそのまんま入る巨大ガレージが立ち並ぶ姿は壮観です。
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クラブハウスだか別荘だか解らないようなモンも隣接してたりするんですが、驚いた事にこれら全て浮桟橋の上に建っていて、水位の上昇によって上がったり下がったりします・・・。まあタイダルなんで当然なんでしょうが、この大きさのもんが浮いてるというのはちょっとビックリです。

さてさて釣果の方はと言いますと、このサイズのスモールマウスがアベレージ。
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スモールマウスという事でチャート系の派手なカラーをチョイスしてましたが、エドにメインベイトはクローフィッシュと聞いてバレットヘッドDDファントムグリーンに換えた所、一発で喰って来ました。

スモールマウスのドスンという鋭いバイトと、強烈なファイトを久しぶりに味わった気がします。
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場所によってはかなりカレントが効いていて、結構な激流の中の釣りなのですが、その後もバレットヘッドDDやジグでポツポツ釣れてみんなで楽しみました。
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周りに居るボートはチョウザメ狙いのクルーザーばかりで、バスを狙ってる人は殆ど居ませんでした。
こんなに面白いのに勿体ないな~なんて思いましたが、やっぱその土地その土地の価値観というのはあるのでしょうね。

春になるとかなりデカいスモールマウスが釣れるらしいので、今度は春に来てじっくりやってみたいと思いました。

グラファイトロッドの父を訪ねて3

2日目の朝、まだ真っ暗闇のNorth Fork Riverは、まるでトーナメントのスタート前のように、沢山のトラックとボートでごった返してました。
今日は朝からゲイリーお墨付きの超ベテランアングラー、クランシーがボートを出してくれてサーモンフィッシングです。
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元弁護士のグランドマネージャー・ジョンも大好きなサーモンフィッシング、しかもクランシーと釣りとあってオフィスの時とは違いリラックスした笑顔です。

それにしても平日だと言うのにスゴい人の数。
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亀山ダムにも負けない混雑ぶりですww

でもそこは流石のクランシー、サーモン素人の僕にも解るよう、釣り方のポイントをしっかりとレクチャーしてくれ、しっかりと釣れるラインを流してくれるのです。
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このサイズのシュヌック(チヌーク)サーモンの他、沢山のジャック(キングサーモンの幼魚)が「ようきんしゃったね」と迎えてくれましたww

凄いなと思ったのはボートのエンジンのデカさで、しかもその殆どがチラー式だと言う事。
クランシーのボートでも100馬力オーバー。中にはYAMAHA SHO225なんてのも居ました!!
っていうか225馬力のチラーって・・・ww

ボートアングラーだけでなくオカッパリも結構居るのですが、スロープ近くで釣っていた老夫婦、2人で延々と投げていたのはファイヤータイガーカラーのウィグルワート。もちろん投げ竿みたいなグラスロッドにスピニングリールという年季の入ったタックルなのが逆に新鮮でした。

知らない方にとっては意外かも知れないですが、早春のバス釣りで有効なウィグルワート、実はサーモンやスティールヘッドフィッシングにも非常に有効なのは有名です。むしろサーモンやトラウトフィッシングが盛んな地域では、「ウィグルワートはサーモン用」という認識の方が強く「へぇ~バスも釣れるのか?」という反応です。
バスタックルなんて殆ど置いてないガソリンスタンドでも、ウィグルワートやそのクローンであるブラッツウィグラー、ルーハーのHotshot等が普通に置いてる所は、僕らクランク好きにとってはちょっと異常な風景ですww
でもそうやって実際にその光景を見る事で、「スティーリーワート」の「スティーリー」がスティールヘッドの事なんだとただの知識ではなく実感出来ました。

さて、昼頃にボートをあげると、NFC社に戻り、魚のクリーンアップです。
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ここはゲイリーの自宅裏にある魚のクリーン専用の小屋ww
ここで釣れた魚を3枚におろし、ジャックはムニエル、サーモンはスモーク用に調理されます。

ちなみにこの隣にはゲイリーのトラウト用ボートと・・・
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それをランチングする為のスロープがあります。
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左に見えるのがゲイリーの自宅です。
自宅の裏にスロープ・・・

この近くにはあるのはロッドビルディングの工場。
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ただのガレージに見えるかも知れませんが、実はこんなにデカイですwww
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この中でガイドラッピングやグリップの組み立てなど、ブランクをロッドに組み上げていく作業が行われています。
敷地内にはこういう謎の倉庫みたいな物がたくさんあって各セクションに分かれて仕事をしているので、あまり大きな物音を立てたりすると突然人が出てきて怒られますww(最終日にゲイリーとライフルぶっ放していて怒られましたww)

ここまでで午前中、午後はまた別の釣り場に向かうのでした・・・。