グラファイトロッドの父を訪ねて5

3日目はなんだかえらい早くから叩き起こされ、車に詰め込まれます。
ポートランドで昨日一緒にスモールマウス釣りしてくれたエドと合流し、真っ暗なハイウェイをひた走ります。
暫く走ったのち、エリックと合流しさらに田舎の方へ・・・
ようやく車が停止した頃には、辺りはすっかり明るく、舗装路ですらない山の中。

目の前にはこんな看板が・・・。
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ここはオレゴン州の指定公園の一部で、一般の車が入って良いのはここまでで、ここから先は切り出した樹木の搬出用トラックや、管理業者の車など特別な許可を受けた車しか入る事が出来ません。

つまりここから先は歩きですww
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North Fork Composites社ジェネラルマネージャーのジョン曰く、最もエキサイティングなゲームフィッシュのひとつが”スティールヘッド”で、これまで釣ったどんな魚よりも面白いそうです。バスよりもボーンフィッシュよりも、キングサーモンよりも・・・。「是非スティールヘッドの凄さを味わってみて欲しい!」そんなジョンのご厚意によって、今回の旅のメインイベントとも言えるスティールヘッド・チャレンジが始まりました。

スティールヘッドはいわゆるレインボートラウト(ニジマス)の降海型。大きな個体になると20ポンドを超えるものも居るとか。
遡上中であってもルアーやフライに果敢にアタックしてくる事と、その強烈なファイトから地元でも非常に人気のあるゲームフィッシュなのだそうです。
これまで多くの魚を釣ってきたであろうジョンやゲイリーにそこまで言わせる魚を是非この目で見てみたい・・・!
ジョンの奥さんクリスアンの作ってくれたランチをリュックに詰め、クリスアンに借りたウェーダーを履いて、みんなの後を必死で追いかけるのです!ww

今回の釣り場オレゴン州のSiletz River(シレッツリバー)には、この時期良いサイズのスティールヘッドが遡上してくるそうで、この川に詳しいエリックが色々と詳しく教えてくれます。
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暫くジョンとエリックのレクチャーを受けていると、ジョンのロッドが弧を描きます!
魚の重々しい引きに引っ張られるように岸沿いの崖を登ったり降りたりして魚を追い掛けます。
(なるほどこういう釣りなのね・・・)
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暫く下流に下った所で大きな崖に行く手を阻まれ、暫く抵抗するもあえなくラインブレイク・・・。
(っていうかこんなのでスティールヘッドとか獲れるの?)という疑問さえ・・・
そんなこちらの懸念を悟ったのか、「スティールヘッドはまず掛かると上流に向かって走り、激しくジャンプするんだ」とジョン。
「今のは多分シュヌック(チヌーク)だ・・・」とエリック。
なるほど、ちゃんと習性を理解して理に適った釣り方で狙ってる訳ね、と独り納得。
「10時間やって1バイトあるかないかの釣りだけどなww」とエド。
思わず「はあ?」と聞き返したあと、「マジか・・・」と天を仰ぎましたが、
なぜか自慢気な目の前の大きな子供達に「やっぱ釣り人は万国共通だな」と思いました。

そしてジョン曰く、「強烈なファイトをする魚だから、ロッドはしなやかでトルクフルな物じゃないといけない。スティッフな(硬い)だけのロッドだと簡単にバレてしまうからね。ロッド全体で魚のファイトを受け止めて吸収しないといけないんだ。」
(ところどころ自信ないですが、たぶんそんな感じの事を言ってたと思いますww)
North Fork Composites社の原点であり、そのブランクの特長そのものを、その根幹の部分を体感できるかもしれないと感じ、なんだか武者ぶるいのように身体が震えました。

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それからポイント移動を繰り返しながら、とにかくひたすら歩きます。
早朝4時から3時間も車に揺られてきた割に元気で居られるのは、目の前の自然がとても綺麗で、見る物全てが新しいからです。
見える範囲全てに群生するのはレッドシダーとメイプル。
レッドシダーはウチでもロデオドライブやB7Deepなんかに使ってる材料。
でも、普段触ってるのは製材されて乾燥した木材であって、生きてるレッドシダーをこんなにたくさん見る機会はそうそう無いのです。
大きな大きなレッドシダーに手を添えて、匂いを嗅いでみたりする姿は相当滑稽だったかも知れませんww

そして表面が超モッシーになってる巨木はメイプル。
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当然葉っぱはグローブのように大きいです。
なんだかスターウォーズに出てくる緑の惑星エンドアに迷い込んでしまったような気分です。
(さしずめエドがチューバッカww)

そうそう、時々ログを満載のトラックに轢かれそうになる道沿いを歩いていると、こんな物が置いてあります。
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なんだろう?と思って観察していると、すぐにジョンが説明してくれました。
「大きな雨が降った時に、泥濁りが川に流れ込まないようにコイツで濾過してるんだよ。」
なんというか、凄い発想だなと。
これなら自然を壊す事なく、道を作った事のダメージを軽減出来る。
そういえば入口あたりにこんなのが山のように積んであった。
状態を見て、隣にあったトラクターでこれを追加設置して回るんだと・・・。
なんだか当たり前のような事にいちいち感心して感動するアホな日本人になってましたwww

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さてさて、歩いて歩いて、ひたすら歩いて、崖を登って降りてのフィットネス。
ここまで釣れたのは、まだパーマークもくっきりの可愛いレインボー。
みんな諦めずに10時間に1回あるかないかのバイトに集中し続けたのですが残念ながらノーバイト。
「魚はハングリーじゃないらしい」とエリック。

結局、この日僕らの誰の竿にもスティールヘッドが掛かる事はありませんでした。
でもみんな超楽しくハッピーだったのは釣り人なら解りますよね♪
美しい景色と空気の中で食べたクリスアンのサンドウィッチは最高に美味しかったです。

そして長い長い道を戻って車の置いてある所へ・・・
流石にみんな疲れてるかなと思ったら、「俺の偏光グラスの方が見えるぜ!」と品評会スタート。
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やっぱり釣り人の阿呆っぷりは万国共通ですww

今回残念ながらスティールヘッドをキャッチする事は出来ませんでしたが、次回またチャレンジするという目標を持つ事が出来ました。
帰り支度をする僕らの脇を、「釣れたかね?」と肩に良型のスティールを肩に担いで通って行ったナイスミドルのドヤ顔をバネに、次回もまたこの地に帰ってくる事を約束したのでした。

人生の宿題と、釣友との約束がまた増えてしまいましたww