月別アーカイブ: 2009年9月

テールヒートン


写真はロデオドライブの初回ロットとセカンドロットのテール部分です。
テールフックハンガーが0.9mmステンワイヤーから1.6mmステンヒートンに替わっています。
始めB7を作り始めた頃は少しでもボディを軽くする為にツイストワイヤーを使用していましたが、
ルアー作りを覚えていく中で違った解釈をするようになりました。

写真を見て頂くと判りますが、ステンレスヒートンの方が太く、ウェイトもあります。
当然ミスキャストなどによる曲がりやボディの破損防止、キャスト姿勢の安定等もありますが、
実はこれが泳ぎの質に大きく影響を与えています。
ロデオドライブを製作した時、初めはバルサ製の試作モデルを作り、次に少し重い桐材。
そして結局はさらに比重のあるレッドシダーに落ち着きました。
軽量なバルサボディでウェイトを集中させるのではなく、ある程度比重のあるレッドシダーで重心を分散させた方がよりバイブレーションが明確で、トルクフルに水を撹拌すると感じたからです。
長いステンレスヒートンはテール部分にさらに別の重心を作り出します。アクションの支点となるベリーフック付近にあるメインウェイトの他に、振り子の役目をする重心が生まれます。
通常クランクベイトはスローに巻いた場合、ウォブルの支点は後方よりにあり、高速リトリーブになるに従って支点が前方にズレて泳ぎます。
フラットサイドのように軽量で平たいルアーは特に顕著で、ボディを軽量にすればする程、低速リトリーブではテールよりも頭を左右に振るような泳ぎになってしまいます。
これはテール部分が水圧に押し負けてしまうからではないかと思います。
小魚とルアーの最も大きな違いはその推進力というか水中を進む方法です。魚は尾で水を蹴って推進力としますが、ルアーはラインに引かれて進みます。
つまり小魚の後方とルアーの後方では水圧が違うのではないかと思うのです。
実際シーバスを釣っていて、良く釣れるルアーとそうでないルアーに明確な違いが出る時があります。
良く釣れるルアーは追尾してきたシーバスはそのままバイトし、そうでないルアーは後方についた途端反転して帰っていきます。それは何度やっても同じでした。
もちろん何を投げても釣れる時もありますが、非常にセレクティブになる時もあります。
これまでの人生で両目の潰れた魚を何度か釣った事があります。彼らには内耳や側線だけでない口元のセンサー(ナマズやコイのヒゲのような物)があると確信出来る経験でした。こうした振動や水圧を感知するセンサーが他の魚にもあって、これが視覚の代わりをしたり、ルアーと小魚を見極めたりしているのではないでしょうか。
ロデオドライブに中途採用したステンヒートンは「テールで強く水を蹴る!」という概念になり、後のスナブノーズシリーズや漁師クランク、B7gen3等に受け継がれていきました。バルサボディのスナブやB7gen3には比重の重いハードウッドをテールに仕込んであり、それが振り子重心とヒートンの受けを兼任しています。
これまでウチのルアーを使って頂いた多くのアングラーから「ワンスポットから複数本の魚を引き出す事が出来た」というコメントを頂きました。
「強力に存在をアピールしながらも場を荒らさない。」それは、その日のプライムタイムを逃さない。または、その場に居るベストな固体を一発で仕留める為に重要なポイントだと思うのです。

真鍮アイ


昨日に引き続きウチのルアーの説明です。
ウチのルアーにはブラス(真鍮)製のタイイングアイを採用しています。
ルアーを作り始めた時、オールドバグリーの真似をして真鍮ワイヤーでリグを作り「おお~アメリカンでカッコイイ~!」なんて一人悦に入っていたものですが、いざ売り物として考えた時、「果たして正しい選択なのか?」と疑問を持った事があります。
真鍮ワイヤーは同径のステンワイヤーに比べて柔らかく、加工は楽になるものの、その分チューンも狂い易く、強度的にもステンに比べれば劣ります。そこでステンとブラス2種類のワイヤーを使った様々な形状のルアーをそれぞれ2個づつ作り、色々なシチュエーションで試してみる事にしました。
そしてその結果判った事は、ステンに比べて弾性に劣る真鍮アイは、ルアーの動きを若干マイルドな物にし、高速リトリーブ時ではルアーの振幅スピードに弾性がついてこれず、一瞬トゥルーチューンが狂うような場面が生じる事があるという事です。
それは狙って作ったような規則正しいS字軌道ではなく、真っ直ぐに泳いでいたルアーが突然横にズレ、また暫くして反対にズレるといった極めてイレギュラーな動きでした。
アングラー自身も予測出来ないイレギュラーというのは、カバーも何もない所で魚のスイッチを入れる事があります。自分自身、これらのルアーで釣りをしていくうち、カリっとした巻き心地のチューンドンピシャのルアーより、ドルルっとした巻き心地(意味判りませんよね・・・)の不規則なルアーを選ぶ機会の方が多くなっている事に気付いたのです。
もちろんここで指す不規則な動きとは、ゆっくり巻いてフラフラ蛇行するという意味ではありません。かなり高速で巻いて初めてフラッ・・・フラッ・・・と軌道が変わるアクションの事です。
そんな訳で、結局個人的趣味を優先し、真鍮製のワイヤー(0.9mm)をタイイングアイとして採用しました。
巻き心地に関しても個人的な趣味になりますが、あまりバタバタカクカクした感覚が好きではありません。
かといってあまりタイトでピッチの細かい「ピリリリリリ~」と抜けてくるような感覚も、「ビ~~~~」とバイブレーションが繋がっているような感じもなぜか釣れるイメージが湧かないでいます。
ウチではプロトタイプのスイムテストをまず手でやります。「んなこたぁ~判ってる」とか言われそうですが、ラインを親指と人差し指で摘み、その先を中指の先に乗せてルアーを勢い良く引っ張ります。目を閉じて指先に集中し、右手の骨格を伝わってくる振動を何度も何度も確かめます。
放っとくと小一時間程やってる時があります。
一見馬鹿みたいな作業ではありますが、過去の自分の経験の中で、最もバイトをイメージ出来る感覚と照らし合わせる儀式のようなものです。
この「巻き感」に関しては、ある狙いがあり、真鍮アイ以外にも大切な要素がいくつかあるのですが・・・。
それはまた、次回の講釈で・・・。

FRPリップ


ウチ(KTW)のクランクベイトに装着されているのは全てFRP製のリップです。
FRPというのはガラス繊維をエポキシ樹脂で固めた物で、俗にいう「基盤リップ」とか「サーキットボード」とかいう物と同じ物です。
まあどんな名称が正しいかはどうでも良いのですが、ウチがこれを使ってルアーを作るのは実に単純な理由です。

写真のルアーはフラットシャッド社のリトルPTというルアーで、随分前に友人からお土産に貰った物です。後に大ブレイクした頃の物に比べると、タイイングアイの太さやボディシェイプ等で若干の差異が見られますので、結構初期の頃の物かも知れません。
このルアーを使って凄く驚いたというか、感心した事があります。アクションのキレ云々もあったかも知れませんが、そんな事はどうでもよくなるくらい「丈夫なリップ」という事でした(笑)。
その頃クランキンをしていて一番の悩みと言えばリップの破損でした。
鬱蒼と茂る竹林やレイダウンに投げ続けるカバークランキン。ちょっとしたキャストミスや、それを外した時。また、小さな魚をボート際でオートリリース(?)する際、船体に当たってリップが真っ二つになってしまうのです。
普段ボートからの釣りがメインなので、年間でルアーをロストする事は殆どありません。しかし、破損によって引退していくルアーは結構な数でした。
しかしこのリトルPT、ボディが凹んだり、色が剥げたりと普通通りに酷使しているにも関わらず、リップの破損がまったくありませんでした。カバーからすっ飛んできて船体にぶつかっても、付け根のペイントが少し飛んだだけでまったくの無事。この程度なら瞬間接着剤を流し込めば普通に使えます。
「う~~~ん、こりゃいい!」と一人感心したのでした。
FRPリップはポリカーボネイトに比べて弾性があり、衝撃に強い特性があるのは今更語るまでもありません。もちろんその恩恵により、極限までリップを薄くする事が出来、キレのあるアクションを生み出すと言われている訳ですが、ウチの場合は「衝撃緩和」「破損防止」という部分が最も比重を占めています。
なぜなら・・・基本ルアーはボディで泳ぐ物。どんな優れたリップも駄目なボディじゃ泳ぎませんし、良いボディデザインが降りてきたなら0.8mmFRPも2mmポリカも関係なく泳ぐと思っているからです。
少なくともウチで試した結果はそうでした。
また、サーキットボードをウリにしていてもビーツァやKottaより泳がないルアーもあります。(キッパリ)
まあ、泳ぎに関してはそれぞれ主観が違うと思うのですが、「動く」と「泳ぐ」は別物だと思うのです。
とまあ、いきなり自分とこの採用したパーツのウリを否定してる訳ですが、実際FRPリップは魔法の万能リップという訳ではありません。ハードマテリアルのカバーやボトムでゴリゴリやれば削れるというウィークポイントも持っています。要は適材適所。環境や状況、攻め方巻き方当て方でFRPとポリカを使い分けて頂ければと思います。

B7Deep炸裂!


以前ハニスポの内村くんのブログで紹介されていたS川くんがまたまたやってくれました。
前回の芹川ダム、ロデオtypeCによる50up3連発に続いて、今度はB7Deepで強烈にハメてくれたようです。
ど~ん!

ど~ん!!

どど~ん!!
先日松原ダムで会った時、「ダム湖だったらB7Deepの使用頻度が高いよ」なんて話したのですが、その言葉を信じて巻き倒してくれた結果だそうです。
こういう時、西根さんじゃないですが「ビルダー冥利に尽きる」とでも申しましょうか、やっぱり笑顔を作る仕事をしているんだな~と実感出来ます。本当にありがたいです。
先程釣果報告と買い物を兼ねて遊びに来てくれましたが、飛距離や潜行角、比重による波動の強弱など、ディープな話しに花が咲きました。

「B7Deepヤバイっすよ~!」
いや、君のがヤバイよ。
S川くんありがと~!!

宣伝2

シマノのWebサイトにて伝家の宝刀がアップされました。
前回の桐山孝太郎に続き、今回は自分の番です。
ファイナルディメンションTS172MHPFとアルデバランMg7の解説ムービーになっており、地元遠賀川にて、ハードベイトを封印された条件で釣ってみました。

「Vol.20 伝家の宝刀 塚本謙太郎編 テスト釣行 in 九州リバー(前編) 」
(前編)という事は(後編)もある訳です。
後編では封印が解かれ、巻きます!
思えばこのロケの翌週、ウチは水に浸かった訳で・・・この時はまだ元気一杯です(笑)