日別アーカイブ: 2009年9月21日

テールヒートン


写真はロデオドライブの初回ロットとセカンドロットのテール部分です。
テールフックハンガーが0.9mmステンワイヤーから1.6mmステンヒートンに替わっています。
始めB7を作り始めた頃は少しでもボディを軽くする為にツイストワイヤーを使用していましたが、
ルアー作りを覚えていく中で違った解釈をするようになりました。

写真を見て頂くと判りますが、ステンレスヒートンの方が太く、ウェイトもあります。
当然ミスキャストなどによる曲がりやボディの破損防止、キャスト姿勢の安定等もありますが、
実はこれが泳ぎの質に大きく影響を与えています。
ロデオドライブを製作した時、初めはバルサ製の試作モデルを作り、次に少し重い桐材。
そして結局はさらに比重のあるレッドシダーに落ち着きました。
軽量なバルサボディでウェイトを集中させるのではなく、ある程度比重のあるレッドシダーで重心を分散させた方がよりバイブレーションが明確で、トルクフルに水を撹拌すると感じたからです。
長いステンレスヒートンはテール部分にさらに別の重心を作り出します。アクションの支点となるベリーフック付近にあるメインウェイトの他に、振り子の役目をする重心が生まれます。
通常クランクベイトはスローに巻いた場合、ウォブルの支点は後方よりにあり、高速リトリーブになるに従って支点が前方にズレて泳ぎます。
フラットサイドのように軽量で平たいルアーは特に顕著で、ボディを軽量にすればする程、低速リトリーブではテールよりも頭を左右に振るような泳ぎになってしまいます。
これはテール部分が水圧に押し負けてしまうからではないかと思います。
小魚とルアーの最も大きな違いはその推進力というか水中を進む方法です。魚は尾で水を蹴って推進力としますが、ルアーはラインに引かれて進みます。
つまり小魚の後方とルアーの後方では水圧が違うのではないかと思うのです。
実際シーバスを釣っていて、良く釣れるルアーとそうでないルアーに明確な違いが出る時があります。
良く釣れるルアーは追尾してきたシーバスはそのままバイトし、そうでないルアーは後方についた途端反転して帰っていきます。それは何度やっても同じでした。
もちろん何を投げても釣れる時もありますが、非常にセレクティブになる時もあります。
これまでの人生で両目の潰れた魚を何度か釣った事があります。彼らには内耳や側線だけでない口元のセンサー(ナマズやコイのヒゲのような物)があると確信出来る経験でした。こうした振動や水圧を感知するセンサーが他の魚にもあって、これが視覚の代わりをしたり、ルアーと小魚を見極めたりしているのではないでしょうか。
ロデオドライブに中途採用したステンヒートンは「テールで強く水を蹴る!」という概念になり、後のスナブノーズシリーズや漁師クランク、B7gen3等に受け継がれていきました。バルサボディのスナブやB7gen3には比重の重いハードウッドをテールに仕込んであり、それが振り子重心とヒートンの受けを兼任しています。
これまでウチのルアーを使って頂いた多くのアングラーから「ワンスポットから複数本の魚を引き出す事が出来た」というコメントを頂きました。
「強力に存在をアピールしながらも場を荒らさない。」それは、その日のプライムタイムを逃さない。または、その場に居るベストな固体を一発で仕留める為に重要なポイントだと思うのです。