Nomad スピニングシリーズ

意外と言われる事が多いですが、Nomadの開発において最も早い段階から着手したのはスピニングシリーズでした。

近年様々な釣り方が増えて来た事によって、スピニングタックルの使用頻度はとても多くなり、またそれだけ多彩なメソッドに対応するべく、非常に多くのバリエーションを生むに至りました。でもそれはとても複雑なタックルシステムを構築し、それをフィールドに持ち込まなければならないという事でもありました。もし、この多彩なフィネスフィッシングスタイルを、少ないタックル構成で行う事が出来れば、荷物がコンパクトだけでなく、思考や選択がシンプルになり、フィールドでの迷いも少なくなるのではと考えました。

そんな”とにかく無駄を省いてシンプルに”がモットーですので、スピニングシリーズは2本のみ。これでなるべく広く、多彩な釣りをやってしまう為に、グリッピングコンセプトやガイドシステムなど、機能の部分のみに徹底的に拘りました。

グリップの部分はリールシートのみのネイキッドスタイル。通常リールシート上下や背の部分にコルクやEVAなどで作られた手に当たる部分のクッション、所謂ハンドル部分がありますが、Nomadにはそれがありません。

近年のスピニングタックルのホールド方法はとても多彩で、2フィンガーと呼ばれる中指と薬指の間にリールフットを挟む一般的なホールドに加え、指3本を前に持って行く3フィンガー、長い時間アッパーバランスでシェイクするのに適したオールフロント(4本全てをリールフットよりも前にする)なんていう保持方法を使われるのですが、自分はその方法全てをルアーやメソッド毎に使い分けます。また、どの持ち方にしろ、無意識に人差し指をブランクに添える人も多く、繊細なメソッドほどその傾向があると感じます。

そんな様々な持ち方をする近年のスピニングタックルにおいて、むしろ余計なハンドル(グリップ)部分はかえって邪魔で、優れた形状(ホールドしやすく回転し難い)のリールシートであれば、それ単体の方が、軽くコンパクトに握れると思ったのです。

エンドグリップはセパレートタイプで、EVAとハイカコルクを組み合わせたオリジナルシェイプの物を採用しています。エンドを半球のハイカコルクにした理由は、よくあるバッジの入ったタイプではフッキング時にエッジが脇腹などに当たって痛く、アザが残る事が多かった為。

半球にした事で当たりが柔らかく、滑りにくいハイカコルクが脇腹や肘に上手くグリップする為、強烈な締め込みにも手首の負担が少なく、しっかりとホールドする事が出来ます。ただ、ハイカコルク部分の面積が大きいと袖やライフベストのストラップを引っ張ってしまいコントロールが乱れるので、EVAとの面積比に拘ったオリジナル形状をデザインしました。

ガイドはチョーク(一番根元)に大口径なだけでなく、フットがダブルになったKWガイドを採用しています。

PEラインにリーダーを組んだ場合によくあるトラブルがガイド絡みなのですが、それはリーダーとPEの結束直後のPEが、キャスト時のスパイラルが収束される際に、ハーフヒッチのようにブランク側のリングとフットの折り返し部分に絡んでしまう事で起きる事が多いのだと思います。

この部分をダブルフットとする事で、リング根元に絡む事なくノットがスムーズに抜けていき、またスパイラルに叩かれてガイドが振動する事も減り、とてもスムーズかつ静かに遠くまでルアーが飛んで行きます。

一番下と2番目のガイドでラインスパイラルは充分収束されるのでベリーからティップは小口径ガイドを使用出来、軽くセンシティブな操作感を損なわず、繊細にリグをコントロール出来ます。

個人的にスピニングロッドにはフックキーパーが不可欠だと思います。ドロップショットやノーシンカーなど、ガイドには引っ掛けにくいリグばかりですし、ベイトと違ってリールには引っ掛ける所すらありません。

これは長年メーカーに希望を出し続けていましたが、あまり重要視される事はなかった部分です。

今回Nomadでは全モデルにフックキーパーを装備。キーパーの形状は勿論、取り付け位置にも徹底的に拘りました。

スピニングモデルの取り付け位置はこの部分。移動の際やロッドチェンジの際に一番自然にラインの長さ調整がし易い位置。

そして取付の角度は真上でも真下でもなく、斜め上。スピニングリールラインスパイラルが干渉し難いだけでなく、キャスト時、操作時、ファイト時に指に上手く干渉しない位置に取付けられています。

ノーシンカーやジグヘッド、ネコリグなどは勿論、保持し難いティアドロップ型のドロップショットシンカーも綺麗に保持します。

このようにブランク本体だけでなく、使い易さを左右する各パーツの部分にも、あらゆる角度から考察したアイディアを盛り込んでいます。

勿論ブランクの方も様々なシチュエーションを想定した、マルチパーパスなものとして設計しました。とて文章では伝わらないと思いますが、また後日ご説明したいと思います。