この春にそのコンセプトを発表させて頂きましたNomadシリーズですが、色々と予定がズレたり壁に当たったりと、なかなか思うようにいかない日々が続いておりました。
ロッドを手掛けるのは初めてではありませんし、それなりに色々と経験を積んできたつもりでしたが、いざロッドの販売そのものとなると、意外と予測もつかない部分で頭を悩まさなくてはならない部分も多々ありました。
今回自社でロッドビジネスを始めるに当たって、まず初めに取り組んだのが各ロッドのキャラ設定です。ベイト4本、スピニング2本でどこでも行けて、年中使えるというのが最初に決めたブランドコンセプトでしたので、それを可能にするロッドのスペックと方向性をある程度決めておく必要がありました。
幸いにしてウチの工房には大手テスター時代のテストブランクや、諸事情で不採用になったテストロッドといった”研究材料”がたんまりとありましたし、ここ数年じっくり固めていた構想を整理するだけの経験値もありました。
そうしてハンドビルドしたテストロッドを持ってはフィールドに赴き、各ロッドのキャラクターを固めていったのが昨年の夏ごろです。
ルアーのテストにしろ、ロッドのテストにしろ、数種類の試作を持ってどれが良いのかとあれこれ悩むという事は自分にはありません。大抵の場合自分にはまず最初に完成形のイメージがあって、それに寄せていくにはどうしたら良いのか、という方法でモノ作りをしていきます。
同時にブランドイメージを左右するコスメの試作を始めました。リールシートやグリップなどを買い集め、切ったり貼ったりしてグリップのモックアップを作りました。
こうしてテストして出来た(見た目は最悪の)サンプルロッドとグリップ周りのモックアップを持って、ロッド製造が盛んな中国のある街に向かいました。昨年秋の事です。
かつてアメリカのロッドのOEMは日本が請け負っていました。次第に経済が上向きになりコストが合わなくなったのと、日本国内での釣り需要も高まった為、今度は韓国がそれを請け負うようになりました。日本がそうであったように次第に韓国もまた経済的に成長し、今度は中国が請け負うようになりました。カーボンプリプレグの商社が出来、その周りにロッドパーツを作る工場が出来、日本や韓国から優れたロッドエンジニアが出向し、今では釣具ビジネスの巨大な拠点となったのです。
その世界中のロッドを大量に生産する街で、自分のイメージ通りのロッドを作ってくれる工場を探しました。どんな工場にどんな設備があり、どんな素材が手に入るのか、これまでの自分の経験値を活かして、そこでどんな事が出来て、どんな事が出来ないのかを見極めてから決めようと思いました。
こうした出会った数人のエンジニアさんはどの人も凄く見識が深く、とても細かな部分まで相談に乗ってくれました。お付き合いを始めてからもそれは変わらず、工場の中で時には真剣に、時には楽しくディスカッションを重ねました。自分もプリプレグの裁断パターンやマンドレルの形状など、拙い知識を総動員しながら可能性にトライして貰いました。
マンドレルのテーパーとプライ数に関して意見を述べていると「塚本さんはアメリカ人ですねw 普通日本人はこっちのパターンを喜びますよ!」と、面白い言葉で反論されましたが・・・。w
しかし、そんな自分の拘りを全て聞き入れて形にしてくれた事には感謝の言葉しかありません。もうすぐテストも終わり、いよいよ製品として秒読み段階に入りました。ブランクの性能は勿論、取り回しや使用感を左右するグリッピングコンセプト。飛距離や感度を司るガイドセッティング。その他、長年感じてきた部分を全て形にしたパーツ達。コスメのデザインやロッドバッグまで、自分の手で細部に渡って拘り抜きました。
自分のイメージした通りにコントロール出来、様々なフィールドに精通し、新しい閃きに対応してくれるロッド達として、誰かの為にではなく自分が欲しい物を夢中になって作りました。自分と同じようにホームフィールドを持たず、あちこちのフィールドへ赴くNomadなアングラーにこそ是非使って欲しいです。きっと共感して貰える部分があるのではないでしょうか。
細かいパーツなどもご紹介しようと思っていましたが、長くなってしまいましたのでまた後日。