ソフトベイトに挑戦した訳。

この冬は寒いですね。身を切るような寒さですが、実際にロッドを通さないと分からない事も多いので、プロトの仕上がりをチェックするだけの短時間ではありますが、鼻水すすりながら日々フィールドに通っています。

さて、またまたさぼり気味ではありますが、まだまだ昨年を振り返ってみたいと思います。この時期に振り替える意味があるのかと思うかも知れません。他所様は皆既に今シーズンに向かって新しい商品を発信し、2018年に向き合っています。ウチはまだ2017年の心の決算をやっています。いつもの事ながら出遅れています。経営者失格です。来年こそは頑張ります・・・。

さあ、そんな言い訳も終わった所で話を続けて行きます。(反省の色なしか!)

昨年2017年に挑戦した新しい事と言えば、ソフトベイトシリーズを発売した点です。自分はハンドメイドでクランクベイトばかり作っていたせいか、「クランクしか投げない」というイメージが強いそうです。シマノ、NFCでは数本のクランキンロッドを企画しましたが、それよりも多くの本数のピッチンフリップやスピニングロッドを企画させて貰いました。当然人並み以上にワーム大好きです。昔の友人達に言わせればソフトベイトのイメージの方が強いそうです。まあでも自分が釣り師としてデビューした頃(最初はビルダーですらなかったんです)、ワームが得意な人なんかいっぱい居て、クランクが得意が人はあまり居ませんでした。ワームの釣りならわざわざ遠くの自分を取材しなくてもいいし、実際ライターさんにそう言われた事もあります。つまり消去法といいますか、クランクベイトが得意な人が少なかったから今日まで生きて来れただけという人間なのです。

まあそんな訳でソフトベイトを使った釣りをあまりクローズアップされる事なく今まで来た自分ですが、先ほども書いた通りソフトベイトの釣りは一通りやるし大好きです。ショップをやっていた頃はアメリカから好きなワームを仕入れて使っていましたし、自分なりの拘りや思い入れもありました。

中でも好きだったのがクロー系やホグ系などのバルキー系フリップベイト。テキサスリグやジグトレーラーとして、様々な物を使って来ましたが、自分なりに「こんなのがあったらなあ」とか、「自分が作るならこうしたい」という願望めいた物も、いっちょ前に持ち合わせていました。

まずベースになるボディは3/0~4/0の大きなフックを、針先までしっかり埋めてスナッグレスにリグれるバルキーサイズ。カバーの奥に滑り込ませたり、強いアクションでズレてしまわないのはとても大事だと感じていました。「このワーム凄くいい感じなのに、フックのホールドが悪いな~」なんてものも多かったので、この辺りのストレスをクリアした物があればな~と思っていました。

次にハサミの部分についてですが、パカクローから始まったであろうアクションクロー系。でもあまりパタパタ動き過ぎるとフォールがゆっくりとなってしまいディープでボトムが取りづらいと感じる場面が多々ありました。特にフットボールジグなどの場合、速いリアクション系のアプローチをしたいのに、トレーラーが水を噛み過ぎて、ゆったりとしたアクションになってしまう・・・。出来れば速く強いストロークの時にだけ水を噛み、シルエットを見せつけながらゆっくりと沈んでいく。ジグトレーラーや重めのリグではヒラヒラ沈んでストンと着底した時に、ブラッシュホグのようにプルンと震えてゆっくり倒れ込んでいく・・・。そんなワームが理想だな~と。

近年のギル系ワームがそうであるように、ワームのシルエットはとても大事だと思っています。魚から見て捕食対象を連想させるシルエットは、”ファーストコンタクトでそう思い込ませる”事で口を使わせやすくなると思うからです。昔ギドヒブドン監修のギドバグというクローワームがありました。別段特に変わったギミックもなく、特別自発的なアクションもせず、ただ「ザリガニっぽいシルエット」というだけのワームでしたがこれが当時テキサスリグやジグトレーラーで非常によく釣れました。フックをセットするボディ部分と、水流を受けてパタパタ動くハサミがあれば一応クロー系ワームとしての役割は果たすのかもしれませんが、それ以外にも触角や小さな脚がついている事で、置いておくだけでザリガニっぽい印象を与え、見た瞬間に誤認させてしまうのではないでしょうか。

そんな自分なりのフリップベイトを妄想する事十数年、ある日突然のように思い立ちます。もしかしたらこれが「思いが溢れた」とかいう奴かもしれません。ずっとずっと悶々と溜め込んだ来たどす黒い想いを、ついに抑える事が出来なくなって凶行に走るように・・・。溜まりに溜まった怒りやストレスが爆発するように・・・。はたまた煮詰めた鍋が噴きこぼれるように、突然憑りつかれたようにモックアップを作り出しました。

そんな狂気と共に出来上がったクローワームにはDEATH SCYTHE(死神の大鎌)と名付けました。カバー奥を攻めれるようしっかりとフックをセット出来るボディ。適度な水噛みでスピーディーなアクションを実現したアクションアーム。シルエットを演出しつつ、細かい定点シェイクに反応しアピールするアンテナとレッグ。アメリカンクローワームのようなドギツくもそそるカラーをラインナップしました。

そして、このワームにはもうひとつ、通常の使い方の他に逆付けノーシンカーによるバックスライドリグにも対応する設計を施しました。自分のように毎回あちこち違うレイクに行く人間や、レンタルボートなど持ち込めるタックルが少ないアングラーにとって、1種類のワームが数種類のリグに対応している事はとてもアドバンテージになるハズです。ちょっと思いついた場面で、同船者や隣のアングラーに釣り負けそうになった時、「今回そのリグ持って来てない!」と悔しい思いをする事なくその場で瞬時に対応する。現場での臨機応変さこそがアングラーの腕の見せ所だと思うのです。デスサイズが適応するリグはテキサスリグ、ジグトレーラー、チャタートレーラー、ノーシンカー、ヘビキャロ、バックスライド、パンチショット、ネコリグなど様々ですが、アイディア次第でもっと色々なリグ、新しいリグに適応するかもしれません。

そんなこんなで始まったmibroソフトベイツシリーズ。まだソフトベイトを使った取材のオファーはありませんが、お店やライターさんに「クランクしか投げないんでしょう?」となぜか断定的に訊かれる事は減ったと思います。もっともっとそう思って貰えるように色々なジャンルでの自分なりの拘りをカタチにして行きたい所なのですが、そうなるとクランクキャラが崩れ、存在意義すらなくなってしまうという懸念もはらんでしまいます。メーカーをやるというのは本当に難しいものですww

色々な想いを込めて作ったアダプティブなクローワーム「DEATH SCYTHE」。今年も皆さんの笑顔と共にあればいいな~と思います。