フラットサイド

フラットサイドクランクという言葉が輸入されて何年になるんですかね~。
多くのマスプロさんからもいくつか発売され、
なんか一瞬グワ~っと流行って、一瞬で消えていった感があります。
日本でフラットサイドが流行ったきっかけとなったこの子達。

左からサンダーシャッド(型番忘れました)
フラットシャッド リトルPT
スタンフォード シャロースモーキンシャッド
一時はプレミアになったりして、多くの人が一度は興味を持ったのではないでしょうか。
もちろん、そのままディープなクランクの世界に埋没していったり、
「これ位なら作れるんじゃね?」
とハンドメイドルアーの世界に足を踏み入れた人も多いかもしれません。
しかし、今、これらフラットサイドが定着していない所を見ると、
殆どの人はその効果を体感する事がなかったり、
期待外れだったりしたんではないでしょうか。
まま、好みはそれぞれなので、それをどうこう言う話ではないのですが、
これらが定着しなかった理由のひとつに、情報の不足があったのかも知れません。
思えば、この頃結構聞いた話しに、
「フラットサイドはカバー回避性能が優れてる」
というのがありました。
どこをどうしたらそういう話になるのかは解りませんが、
「フラットサイドは特別なルアーで、これを使えば魚が湧いてくるように釣れる」
という過度の期待が集まっていたのかも知れません。
ところが実際使ってみるとそんな事はなく、
動きもヨタヨタとおぼつかなく、
巻いた感じもヌタヌタと頼りなげ、
勇んでカバーに投げてみても根ガカリばかり・・・。
「これならラウンドのが全然いいじゃん!つかフラットサイドいらなくね?」
そんな結論に達したのかも知れません。
確かにこれらのルアーはカバー回避性能も高くなく、
アクションもそれほどビビットでワイドという訳ではありません。
むしろ逆ですw
それは当時よく言われていた良いクランクの条件、
「太いラインでゆっくり巻いてもよく動く」とか、
「高浮力でハイピッチ」という物にまったく当てはまりません。
まあ、単純に考えてボディが薄いんですから、浮力が高い訳がないんです。
浮力が高くないんですから、当然レスポンスも高くないんです。
では、これらのルアーがなんの為に存在するのか?
それは「表層~中層の高速リトリーブ」です。
これらのルアーはある程度速い巻き速度で使う事を前提に作られています。
なんといったらいいでしょうか・・・
2サイクルのバイクのパワーバンドが上の方にあるように、
ある程度速い速度で巻いてやるとアクションが生き生きとしてきます。
つまり、ゆっくり巻いてもよく動くのではなく、
ハイピッチになるくらいの速度で巻く。
これがフラットサイドを使う上で重要なファクターです。
ラウンドクランクでも高速巻きは可能なのですが、
水噛みがマキシマムに達して、破たん寸前のアトラクターてんこ盛りではなく、
すいすいと余裕を持って泳いでる感じといったらいいでしょうか。
つまり、最初から設定されている巻き速度がある程度速いのです。
使うシチュエーションは、フラットやブレイク、ベイトの集まるショアライン。
リザーバーの水深10mを超える深場での表層という場合もあります。
ダム湖などでは梅雨時期に濁る場合もありますが、
全面濁っているように見えても、表層1mは澄んでいるという場合があります。
そういう場合は、濁りに身を隠した魚の頭上を、
何かから逃げ惑うように高速リトリーブ。
そんな使い方ですから、対象カバーはフラットに点在するスタンプや、
ブランチ(枝)が落ちてメイン(幹)だけになったティンバー、
沖合に転がる石や岩がかわせるだけの物でOK。
そう、バイブレーションよりも少しだけ回避性能があれば充分なのです。
そういった「出し所」みたいな物が解れば、
フラットサイドクランクはラウンドとまったく異なるルアーであり、
その是非を決める要素はまったく違ったものだという事が見えてきます。
「自分の巻くスピードに合ったルアーを選ぶ」のではなく、
「ルアーに合った巻きスピードを見つける」。
もっと言えば、「その時、その魚にあったスピードを見つけ、
そのスピードに合わせてルアーやタックルを決める」でしょうか。
そうやって考えていくと、ルアーの良し悪しなんて本当はないのかも知れません。
どんなルアーも使用条件さえ合えば爆発する危険を孕んでいますし、
その持ち駒が多ければ多い程、釣りは楽しいものになってくるはずです。
フラットサイドがもし本当に、クランクベイトとしてダメな条件を取り揃えたルアーなら、
すぐに淘汰され、ジャンルを生み出す事もなく消滅したでしょう。
しかし、実際は永きに渡って作られ、それを愛用する人も多いルアーです。
もし家のどこかに眠ったままの人が居たら、
是非来シーズンは連れ出してあげてみて下さい。
案外これまでのクランクベイトの常識を破壊してしまう出来事が起こるかも知れませんよ。