繋ぐもの

 

いよいよ春到来という事で、タックルに関する質問、特にラインに関する質問がチラホラありましたので、自分の愛用するラインとその理由についてご紹介したいと思います。

まあmibro全く関係ない話しですし、一応公式ブログとしてどうなんだってご意見もあろうかと思いますが、実釣に関する話しという事で、よろしくお付き合いくださいww

今現在、自分が愛用しているラインはこちら。

サンラインのFCスナイパーインビジブルというモデルです。

フィネスアプローチからフリップまでソフトベイトの釣りは勿論、クランクやチャター、スピナベなどの巻き物といった殆ど全ての釣りでこのラインを使っています。(一部トップウォーターやフロッグやスピニングの一部の釣りはPE)

なぜこのラインを偏愛するに至ったか・・・というお話しですが、

自分がラインに求める物は

・強くて伸びが少ない

・使いやすい

・入手しやすい

この3つです。

サンラインさんには他にFCスナイパーというとても使い易くて高性能。バルク(300m巻き)もあっていつどこでも買えるという商品があります。

このFCスナイパーは本当に使い易くて良いラインですし、発売から年月が経った今も愛用者がとても多い人気ナンバーワンのラインで、自分もメインで使用していた時期があります。

しかしある日、知人の勧めでこのラインに出逢いました。

シューターブランドの目探というラインです。

シューターブランドのラインはFCスナイパーに比べて硬めの原糸を使っていて、耐摩耗性に非常に優れた特性を持っているのですが、この目探シリーズはその硬い原糸にグリーンやブラウンなどの特殊な色付けをしていて、色彩の連続性を絶つ事で魚に警戒心を与えず、それでいてラインの動きなどを見易くする、つまりカモフラージュ効果とマーカー効果を併せ持つ特性を持ったラインという位置付けなのですが、自分が特に気に入った点はシューターブランドの硬い原糸をベースに色付けをする事で、表面は柔らかく芯の部分はコシが残った所謂アルデンテのような状態になっている事で、シューターブランドの強さとFCスナイパーのような使い易さをミックスしたようなラインになっている部分でした。

シューターは確かにハリスのように強くフリップなどには最高のラインなのですが、その分硬さがあるので巻き物系で使うとキャスト時にガイドを抜けていく音や、巻いている時にライン表面につた汚れなども感知しやすく、多少の煩さを感じる部分がありました。しかしこの目探はそうしたストレスが少なく、とても静かに巻けるのでルアーの泳ぎや水中の状態をクリアに感じる事が出来、また根ズレにも強いので込み入ったカバーにも憶する事なく撃ち込んでいく事が出来ました。

こうして強い、使い易い、まではクリアしていたのですが、シューターブランドは置いているお店が限られていて、特に目探シリーズは在庫しているお店が少なかったので遠征した先で入手が困難だった事もありました。

そんな目探シリーズがマイナーチェンジし、FCスナイパーブランドとなった事で全国どこでも入手が可能になった事は自分にとってとても嬉しい事でした。

こうして自分にとっての「強くて、使い易くて、入手が簡単」という愛用条件を満たしてくれる素晴らしいラインとなったのでした。

カモフラ好きの自分的には、リールに巻いた時のこのまだらな感じも高級感あって好みなのです。

それとノットの質問も多かったので紹介しますが、自分は近年ほぼダブルクリンチノットでルアーを結んでいます。

以前はルアーによってパロマーやハングマンズノットなどを併用していましたが、今はPE直結のみパロマーノット、それ以外は殆どダブルクリンチノットを使っています。

(太いリーダーを使ったラインシステムを組んだリグでボトムに根掛かりが多い場合に、ラインシステムから切れて欲しくない場合、つまりリーダーを水中に残したくない場合のみユニノットを使う事もあります。)

理由は簡単に結べて仕上がりが綺麗だからです。

仕上がりが綺麗というのはゴミを拾い難いだけでなく、結節強度にも大きく影響を与えるのでとても大切な事でもあります。

しかし実は、未だに多くの釣り人が間違って覚えている事があります。

クリンチノットとインプローブドクリンチノットの違いについてです。

この図の上のノットがクリンチノット、多くの人がクリンチノットだと思っている下のノットはインプローブドクリンチノットと言います。

大きな輪っかに先端を戻すかどうかの違いなのですが、締め込み方によっては強度的に大きく違ってくる場合もあります。

インプローブドの方が抜けにくい構造ではあるのですが、引っ張る方向の問題で締め込みが不安定になります。なので締め込みが簡単なクリンチノット方が強度が安定するのです。

この図で表しているのは普通のクリンチノットなので、フックアイに2回通すのがダブルクリンチノットになります。

よく話題になる巻き付け数ですが、自分の場合7回~7回半巻き付けています。

ナイロンを使っていた頃は4回半以上は焼けてしまう事が多かったのですが、フロロになってからはこの回数が最も安定して強いと感じています。

以前とあるラインメーカーの開発担当者と話した時に、メーカーの結節強度試験機で同じノットの同じ回数が最も安定した強度が出たと言っていました。ただし、7回ともなると締め込みにちょっとしたコツが要るので、締め方を理解している人限定の強さであるとも言っていました。やはりノットは日々の研究と練習で練度を高めていく必要がありますね~。

まあ、ラインの話なのかノットの話しなのか分からなくなってきましたので今回はこの辺で。

最後まで読んで頂きありがとうございました。

スピナーベイトから春

 

高校生の頃(30年以上前)の話しなんですが、その頃は近くのダム湖に通っていて、1月2月頃はジグブタ(ラバージグのポークを付けたもの)で釣れていたのに、3月に入った途端スピナーベイトで釣れた、といった経験を何年か続けてした覚えがあります。

しかもそれはコロラドブレードで、主にフォーリングで食ってくる、といったものでした。

その後大人になってからも同様の経験をする事が何度かあり、すっかり自分や仲間達のパターンのようになっていたのですが、近頃はフィールドもタフになり、熱い九州といえど早春はNBNFが当たり前みたくなってしまい、3月にスピナーベイトを投げる友人もすっかり減ってしまったような気もします。

そんな事を考えながら、ブッシュ際に落とし込んだアパッチスピナーベイトにドンッ!と激しい反転バイトがあったのは3月6日。2月の釣行では時折ブッシュの中のジカリグに反応があるものの、NBNFの続いた2月が明けてすぐの未だ寒い日でした。

ロッドが引き込まれるような強烈なバイトから渾身のフッキング。寒さで固まった身体でオタオタしながら48cmのナイスサイズが釣れたのは、4時間のフリップから「そういえば3月だな・・・」とスピナーベイトにチェンジした直後の事でした。

その後も僅か数十メートルの同じのストレッチで3連発。

雨パワーによる恩恵か、水温低下によるコンディションダウンか分からない状況ながら、しっかりと春の訪れを釣果で感じる事が出来ました。

そんな釣果を叩き出してくれた弊社のアパッチスピナーベイトには2種類のブレードタイプがあります。

丸いシルエットのコロラドブレードと、柳葉形状のウィローリーフブレードです。

以前にも書いた事がありますが、この2種類、形状だけでなく表面処理を変えていて、コロラドはツルツルのプレーンタイプ。ウィローは凸凹のハンマードです。

これ、意外かも知れませんが、ツルツルの方が抵抗が大きく水噛みが良く、凸凹の方が抵抗が少なく水抜けが良いのです。

オリンピックや世界水泳などでスピード社の水着の話しを見聞きした事があると思います。水は空気に比べて600倍も密度があるので、ルアー程度のスピードでも充分にディンプル効果が影響するのです。

ハンドメイドで何千何万とルアーのスイムチェックとトゥルーチューンをしていると、トップコートがグロスかマットかでもルアーの引き抵抗が違うのが分かります。

激しく高速で回転しているブレードなら猶更だと思います。

話が逸れました・・・w

このようにブレード表面の処理を変える事で、それぞれのブレードタイプの使用目的をよりハッキリとさせています。

コロラドはゆっくり、ウィローは速く。

つまりコロラドは早春や晩秋などの低水温期、又は強い濁りなどゆっくり巻く必要がある場合。

ウィローは魚が活発でルアーを見切りやすい水温や水色で、速く巻いて追わせる時。

そんな風に役割を明確にしているのです。

共通する部分はトレーラーフック要らずのビッグフック。モンスタークラスが来ても折れたり伸びたりすっぽ抜けたりしない安心サイズ。

そして美しいフレア状態を保ち、キャスト時の抵抗が少なく、簡単に交換が可能なスカートシステムです。(本年度よりスカート単体の販売も予定しております)

さらにシンプルで効果絶大なトレーラーキーパー。定番のツインテールタイプから最近ちょっと流行りつつある小さめのスイムベイト(シャッドテール)を付けてゆっくり巻くのにもピッタリです。

最後にハーキュリーワイヤーという丈夫で反発力の強いワイヤーを使用。大型バスどころか雷魚やナマズが来てローリングファイトしても壊されない逸品なのです。

 

多分GW頃まで有効なアパッチタンデムコロラドのフォール&デッドスローリトリーブ。

是非是非試して頂けたなら、クランクやミノーだけじゃないmibroの拘りがたくさん詰まっているのが分かって頂けるのではないかと思っております。

皆さまの素敵なスピナベライフが、より一層豊かなものになりますように・・・。

リールシートの拘り

画像は昔某社で手掛けたリールシートの試作モデルたち。

最初にカーボンパイプにエポキシパテでコンセプトモデルを作って企画を出し、デザイン部署のスタッフがモデリングした切削モデルをベースに、湖に泊まり込みで盛ったり削ったりしていた頃のものです。

この形状のコンセプトはより自然な形で握れること。

よくあるトリガーのすぐ前が大きく削れた形状だと、3フィンガーパーミングで薬指、2フィンガーで中指が当たる部分が一番低くなり、人間本来の指の並びからは不自然な形で握る事になります。

そこでトリガーよりもう1本前の指を低くする事で、変に反った形ではなく自然な形でパーミング出来る事を狙ったものです。

しかし、最終的に発売したものがこちら。

大きく違うのはトリガーの形状と、トリガー前に穴が増えた事。

これによって当初のコンセプトからは大きく違うものになってしまいました。

これは当時の責任者の人がG社のリールシートを気に入り、どうしてもこの形状にしたいという要望があった為の設計変更でした。

つまり前半分が自分のコンセプト、後ろ半分が責任者のというハーフ&ハーフな形状となり、少しモヤモヤを残す仕事にはなりましたが、お金を出すのは自分ではないので黙って了承する事にしました。

さて、そこから時を経て、海外のサイトでとあるリールシートを見つけました。

トリガーのすぐ前ではなく、指1本分前が大きく開口した形状と小さく薄いトリガーは、昔自分がイメージしたものに酷似していました。

早速取り寄せて、ロッドに組んでみたのですが、握ってすぐに欠点に気付きました。

このリールシートはトリガー前の側面が大きく凹んだデザインになっており、その為トリガー前の指が当たる部分が細くなっています。その為長時間握っているとこの部分が痛くなってしまうのです。

そこでエポキシ樹脂で埋めて使ってみると、長時間使っても握り疲れがなく、手の小さな自分でも快適にキャストし続ける事が出来ました。

そこで、どうせ埋めるならここにワンポイントになるカラーパーツを作って、それをコンセプトカラーにしようと考え、それがそのままNomadシリーズのブラック×ライムグリーンのカラーコンセプトになりました。

実際に手が当たる部分はこんな感じ。

他の部分はとにかく小さく、一番力が掛かる面積は広げて疲労感や拘束感を軽減するグリッピングコンセプトが完成しました。

とにかく小さくコンパクトに握れる為、これまで2フィンガーでパーミング(中指と薬指の間にトリガー)していた左ハンドルのリールも、右ハンドルと同じく3フィンガーパーミングの状態でキャストからリトリーブまで行えるようになり、とても快適に釣りを続ける事が出来る事が可能になりました。

Nomadシリーズを設計する時、どこの誰にも似ていないロッド、誰も見た事がないロッドを作りたいと思っていました。

プロショップに並んでいても、釣り場で持って歩いていても人目を惹くロッドを目指しました。

でも装飾ではなく中身にお金を掛けたい。

シンプルだけど必要な部分には徹底的に拘りたい。

何より自分自身が欲しいと思う物だけを作りたい。

そんな気持ちを形にしました。

このリールシート、パーツ単価としては結構高いですし、余計なパーツや工程もあるのでそれなりにコストが掛かります。

でも装飾などの部分を必要最小限に留める事で、比較的リーズナブルな価格でリリース出来たと思います。

Nomadシリーズに搭載した拘りのリールシート、是非一度触ってみて欲しいです。

続、たかがリール、されどリール

 

リールの話しの続きです。

先日のエントリーでは色々なご意見も頂きましたが、自分は「昔のリールの方が良かったよ」という趣旨で書いた物ではなく、単純にフィッシングショーに向けての業界のワクワク感を、昔リール開発に関わっていた物として、当時の経験と共に懐かしくご紹介したものです。

因みに自分は新しい物大好きで無類のミーハー。新機構とか新しい構造とかいう物にワクワクする性分で、毎年新製品の並ぶこの時期が大好きです。

そんな自分が最近愛用しているのはダイワのリールです。

もちろんシマノやABUのリールも持っていますが、使用頻度で言えば圧倒的にダイワのリールを使っている事が多いです。

 

特に所有台数が多く、最も使用頻度が高いのがTATULA-SVとアルファスSVの2機種。

巻き物にはTATULA、撃ち物にはアルファスのSVを使っています。

一応STEEZなんかも持ってはいるのですが、安くて使い易いのでついつい手が伸びてしまいます。

 

さて、自分がダイワを使う理由の大半はブレーキシステムにあります。

物質的な摩擦抵抗でブレーキを掛ける遠心ブレーキに比べて、無接点電磁誘導ブレーキというのは天候や気温に左右されず、メンテナンスの回数も少なくて済むのでとても楽です。

近年のシマノリールは外部からブレーキ量をコントロール出来ますが、以前のSVSはブレーキ量を変える為にサイドプレートを開けなければならず、特に雨の日は濡れた指でブレーキブロックを触るのは非常にストレスでした。

また、風向きや投げる方向、急な思い付きでルアーをチェンジした際、ブレーキのセッティングを瞬時に換える事が出来るのは外部から楽にコントロールできるマグブレーキは、刻々と変わるフィールドではとても理に敵っていると思うのです。

しかし、先述した通り最近のシマノリールに搭載されたブレーキは外部から簡単にブレーキ力を調整出来ます。それでもダイワのリールを好んで使う訳はメカニカルブレーキにあります。

この動画はかなり以前の物で、しかもリールはジリオンSV-TWのものですが、初めてSVスプールを使用した時にGoproで撮影したものです。

音声での解説をしてないので分り難いと思いますが、まずクラッチを切ってルアーを水面に落とすと激しくバックラッシュするくらいメカニカルブレーキをスカスカにしています。しかし、そのままキャストしてルアーが水面に落ちてもノーサミングでバックラッシュ無し。ルアーは7gのスイムジグにシャッドテールワームとそれほど飛距離が出るルアーでもないのですが、充分な飛距離が出ている事が分かると思います。

 

これまでメカニカルブレーキはルアーがゆっくり落ちていって、着水したら止まる程度に締め込んで使うのが良いと言われて来ました。しかしこのSVスプールはスプールがガタつくくらい緩めてもバックラッシュしないのです。

クランクベイトでウッドカバーや岩場を巻いてくるとき、締め込んだメカニカルブレーキというのは巻き感度を抑え込んで水中の情報をアングラーに伝達するのを阻害します。もっと平たく言えばメカニカルブレーキが緩い方が巻き感度が高くなります。

カバー周りを攻める際、キャストがどうしても変則的なりがちなのでバックラッシュし難いブレーキセッティングは不可欠なのですが、巻き感度を阻害せずに極力フリーな巻き感度でリトリーブする事もカバー回避率を上げ、小さなバイトを感知する為に必要な要素です。

シャローカバーを狙う際には何メートル飛んだかよりも、正確なキャストを素早く連続で行える事と、釣れる巻き感度でリトリーブする事が重要だと思うのです。

そんな訳で現状自分の釣りのスタイルに最もマッチしているのがダイワのリールで、中でもSVスプールを搭載したこの2機種は価格も手頃で使い易いです。

ただ、リールなんて日進月歩です。ちょっとしたアイディアでどんどん進歩し、古いフォーマットや価値観なんてあっという間に置いて行かれる世界です。

今年も各社色々なモデルが発表されています。アジアの工場の技術がどんどん進歩しているので、昔ならエントリーモデルと言われるような価格帯で、数年前のフラッグシップ並みの高性能なリールが続々発売されるようになりました。フラッグシップ1台買うよりも、中価格帯のリールを2台、いや、エントリーモデルを3台買った方が釣果に結び付く・・・と言われる時代がやってきたのかも知れませんね~。

独り勝ち状態のシマノか、先進的なチャレンジを続けるダイワか、伝統のABUか、はたまた新たな勢力が台頭するか・・・とても楽しみな2019年です。

 

たかがリール、されどリール。

 

その昔、「何だかよく分からないけど一番高いリールを使っておけば間違いない」とか、「フラッグシップでないと恥ずかしい」みたいな感じでリールを選んでいた自分を変えてくれたリールがありました。

当時シマノ社と契約したての頃、次期モデルとなるコンクエスト100DCのテストモデルの実釣評価をしている最中、担当者が「これはインストラクターさんに見て貰うようなクラスではないんですが・・・」と前置きして差し出したリールがスコーピオン1000Mgでした。

取り敢えず同じくテスト中だったサンプルロッドにつけてキャストしてみると、軽くコンパクトなボディとスムーズな回転、ギアとハンドル周りの軽さによる巻き高い感度と、ショートレンジで釣りをする事の多い自分にはとても使い易いリールでした。

「これ、皆さんが思ってるより遥かに良いリールですよ」と言った覚えがあります。

翌年からの釣りでは、雑誌やテレビの取材ではコンクエスト100DCを使っていましたが、プライベートの釣りや、新しいロッドブランド(後のファイナルディメンション)の企画やテストではスコーピオン1000Mgを使っていました。

その年は同時にアンタレスDCのテスト年でもあり、ブレーキプログラムのテストキャスターとしても参加させて貰ったのですが、使えば使う程「自分には必要ないな」と感じてしまい、翌年の発売時に「アンタレスDC何台必要ですか?」という販売促進課の問いに「アンタレス要らないのでスコ1000Mgあと5台送ってください」と応え、当時10台のスコーピオン1000Mgを使っていました。

今では大手のメーカーさんも中価格帯のプロモーションにも力を入れていますが、当時はフラッグシップ以外殆ど宣伝しなかったので、自分の行動はかなり奇怪に映ったかもしれません。

 

さて、そんな中価格帯マニアな自分が次に手掛けるのがメタニウムMgです。

このリール、企画段階では当時のメタニウムXTをそのままMg化(マグネシウムボディ化)する話が進んでいましたが、これがどうしても違和感があり、デザインからやり直して貰うよう懇願しました。

中身を作る開発担当とは実釣交えたギア比や振動伝達の話を。外側を作るデザイン室の担当者とは人間工学に基づくパーミングと釣りの姿勢を、月に何度も大阪に通ってあーでもないこーでもないと意見をぶつけ合っていました。

スコーピオン1000Mgの良い部分は継承し、欠点をあらゆる角度から分析して潰していくのはとても熱量の要る作業でしたが、当時誰もやっていなかったのでとても楽しかったです。

そしてその次が初代アルデバランなのですが、このリールはとにかく企画を通すのが大変でした。

”超軽量コンパクト、小径スプールにより軽量ルアーのコントロールとライトリグ使用時の感度に優れる”というコンセプトは当時のお偉い方々にはネガティブに映るようで、「王道から外れた枝葉」とか「シマノらしくない」という言葉が返って来た程でした。

それでも周りの社員さん達と一緒に根気よく説得を続け、ようやくアルデバランは誕生するのですが、発売後の評価は低く、相変わらず「シマノらしくない」とか「軽すぎる」といった意見が身内から出続けました。

後にそうした意見を取り入れた「スコーピオン1000」(赤くて蠍印=シマノっぽい)(アルミボディ:重量化)というモデルが出るのですが、あまり良い評価ではなかったと記憶しています。

 

現在のシマノはフラッグシップモデルから中低価格帯まで網羅し、ビッグベイトからスモラバまで、それこそありとあらゆるバスフィッシングシーンに対応する素晴らしいリールをたくさんリリースしています。

リールの企画や開発現場から離れて10年近く経ちますが、毎年この時期はわくわくしますね。

今年はどんなリールは出るんでしょう。

たかが糸巻きのブースに群がる釣り人の熱量を今でも思い出します。