月別アーカイブ: 2018年1月

ソフトベイトに挑戦した訳。

この冬は寒いですね。身を切るような寒さですが、実際にロッドを通さないと分からない事も多いので、プロトの仕上がりをチェックするだけの短時間ではありますが、鼻水すすりながら日々フィールドに通っています。

さて、またまたさぼり気味ではありますが、まだまだ昨年を振り返ってみたいと思います。この時期に振り替える意味があるのかと思うかも知れません。他所様は皆既に今シーズンに向かって新しい商品を発信し、2018年に向き合っています。ウチはまだ2017年の心の決算をやっています。いつもの事ながら出遅れています。経営者失格です。来年こそは頑張ります・・・。

さあ、そんな言い訳も終わった所で話を続けて行きます。(反省の色なしか!)

昨年2017年に挑戦した新しい事と言えば、ソフトベイトシリーズを発売した点です。自分はハンドメイドでクランクベイトばかり作っていたせいか、「クランクしか投げない」というイメージが強いそうです。シマノ、NFCでは数本のクランキンロッドを企画しましたが、それよりも多くの本数のピッチンフリップやスピニングロッドを企画させて貰いました。当然人並み以上にワーム大好きです。昔の友人達に言わせればソフトベイトのイメージの方が強いそうです。まあでも自分が釣り師としてデビューした頃(最初はビルダーですらなかったんです)、ワームが得意な人なんかいっぱい居て、クランクが得意が人はあまり居ませんでした。ワームの釣りならわざわざ遠くの自分を取材しなくてもいいし、実際ライターさんにそう言われた事もあります。つまり消去法といいますか、クランクベイトが得意な人が少なかったから今日まで生きて来れただけという人間なのです。

まあそんな訳でソフトベイトを使った釣りをあまりクローズアップされる事なく今まで来た自分ですが、先ほども書いた通りソフトベイトの釣りは一通りやるし大好きです。ショップをやっていた頃はアメリカから好きなワームを仕入れて使っていましたし、自分なりの拘りや思い入れもありました。

中でも好きだったのがクロー系やホグ系などのバルキー系フリップベイト。テキサスリグやジグトレーラーとして、様々な物を使って来ましたが、自分なりに「こんなのがあったらなあ」とか、「自分が作るならこうしたい」という願望めいた物も、いっちょ前に持ち合わせていました。

まずベースになるボディは3/0~4/0の大きなフックを、針先までしっかり埋めてスナッグレスにリグれるバルキーサイズ。カバーの奥に滑り込ませたり、強いアクションでズレてしまわないのはとても大事だと感じていました。「このワーム凄くいい感じなのに、フックのホールドが悪いな~」なんてものも多かったので、この辺りのストレスをクリアした物があればな~と思っていました。

次にハサミの部分についてですが、パカクローから始まったであろうアクションクロー系。でもあまりパタパタ動き過ぎるとフォールがゆっくりとなってしまいディープでボトムが取りづらいと感じる場面が多々ありました。特にフットボールジグなどの場合、速いリアクション系のアプローチをしたいのに、トレーラーが水を噛み過ぎて、ゆったりとしたアクションになってしまう・・・。出来れば速く強いストロークの時にだけ水を噛み、シルエットを見せつけながらゆっくりと沈んでいく。ジグトレーラーや重めのリグではヒラヒラ沈んでストンと着底した時に、ブラッシュホグのようにプルンと震えてゆっくり倒れ込んでいく・・・。そんなワームが理想だな~と。

近年のギル系ワームがそうであるように、ワームのシルエットはとても大事だと思っています。魚から見て捕食対象を連想させるシルエットは、”ファーストコンタクトでそう思い込ませる”事で口を使わせやすくなると思うからです。昔ギドヒブドン監修のギドバグというクローワームがありました。別段特に変わったギミックもなく、特別自発的なアクションもせず、ただ「ザリガニっぽいシルエット」というだけのワームでしたがこれが当時テキサスリグやジグトレーラーで非常によく釣れました。フックをセットするボディ部分と、水流を受けてパタパタ動くハサミがあれば一応クロー系ワームとしての役割は果たすのかもしれませんが、それ以外にも触角や小さな脚がついている事で、置いておくだけでザリガニっぽい印象を与え、見た瞬間に誤認させてしまうのではないでしょうか。

そんな自分なりのフリップベイトを妄想する事十数年、ある日突然のように思い立ちます。もしかしたらこれが「思いが溢れた」とかいう奴かもしれません。ずっとずっと悶々と溜め込んだ来たどす黒い想いを、ついに抑える事が出来なくなって凶行に走るように・・・。溜まりに溜まった怒りやストレスが爆発するように・・・。はたまた煮詰めた鍋が噴きこぼれるように、突然憑りつかれたようにモックアップを作り出しました。

そんな狂気と共に出来上がったクローワームにはDEATH SCYTHE(死神の大鎌)と名付けました。カバー奥を攻めれるようしっかりとフックをセット出来るボディ。適度な水噛みでスピーディーなアクションを実現したアクションアーム。シルエットを演出しつつ、細かい定点シェイクに反応しアピールするアンテナとレッグ。アメリカンクローワームのようなドギツくもそそるカラーをラインナップしました。

そして、このワームにはもうひとつ、通常の使い方の他に逆付けノーシンカーによるバックスライドリグにも対応する設計を施しました。自分のように毎回あちこち違うレイクに行く人間や、レンタルボートなど持ち込めるタックルが少ないアングラーにとって、1種類のワームが数種類のリグに対応している事はとてもアドバンテージになるハズです。ちょっと思いついた場面で、同船者や隣のアングラーに釣り負けそうになった時、「今回そのリグ持って来てない!」と悔しい思いをする事なくその場で瞬時に対応する。現場での臨機応変さこそがアングラーの腕の見せ所だと思うのです。デスサイズが適応するリグはテキサスリグ、ジグトレーラー、チャタートレーラー、ノーシンカー、ヘビキャロ、バックスライド、パンチショット、ネコリグなど様々ですが、アイディア次第でもっと色々なリグ、新しいリグに適応するかもしれません。

そんなこんなで始まったmibroソフトベイツシリーズ。まだソフトベイトを使った取材のオファーはありませんが、お店やライターさんに「クランクしか投げないんでしょう?」となぜか断定的に訊かれる事は減ったと思います。もっともっとそう思って貰えるように色々なジャンルでの自分なりの拘りをカタチにして行きたい所なのですが、そうなるとクランクキャラが崩れ、存在意義すらなくなってしまうという懸念もはらんでしまいます。メーカーをやるというのは本当に難しいものですww

色々な想いを込めて作ったアダプティブなクローワーム「DEATH SCYTHE」。今年も皆さんの笑顔と共にあればいいな~と思います。

 

 

 

アパッチDW

昨年末にもご紹介したアパッチスピナーベイトにいよいよダブルウィロータイプが追加されます。

タンデムコロラドと同様に、形状、カップなど、mibroオリジナルデザインとなるウィローブレードはその表面の形状も独特です。

通常のハンマードブレードは表面側が凹んだ凸凹形状になっていますが、このブレードは裏から叩いて表面にボコボコと飛び出したおろしがねのような形状をしています。

そもそもスピナーベイトのブレードには表面がツルツルのプレーンタイプと、凸凹したハンマードタイプがあります。これらの使い分けとしてよく言われるのが「面反射と乱反射」つまり視覚効果の違いによる使い分けが一般的ですが、自分は表面処理の違いによる水流抵抗の違い、巻き抵抗の違いを重視します。

表面がツルツルの物と、凸凹の物を比べた場合、ツルツルの方が抵抗が大きくなると言われます。有名なのはゴルフボールのディンプルや、少し前に話題になったSPEED社の水着などでしょうか。表面の凸凹が抵抗を減らし、ボールの飛距離を伸ばしたり、競泳のタイムを縮めるという物です。

このディンプル効果の話をすると以前は「そんなに速く巻くの?w」と嘲笑されたものですが、SPEED社の水着はルアーの速度に近いのでイメージし易いと思います。何せ水の密度は空気の600倍もありますので。

実際ハンドメイド制作時は1日に数百個のルアーをスイムテストします。その時、同じルアーでもトップコートがグロスかマット(つや消し)かの違いで、指に感じる抵抗が結構違ったりもします。

ではなぜブレードの水流抵抗に拘ったかというと、低水温期やマッディウォーターでゆっくり巻く事が多いコロラドと違い、暖かい時期やクリアウォーターで使う事が前提のウィローリーフは「速く巻く」というのが基本であり、前提。高速で広く長くリトリーブする事を目的にブレードをデザインした場合、水流抵抗の少ない表面処理は不可欠だと思うのです。また、ディープをスローに巻く場合も、水流抵抗の小さなブレードはその揚力も小さく、同じ速度で巻いても浮き上がりを抑え、一定のレンジをキープし易くなると思います。

そんな背景もあって、アパッチの企画の際にマッディシャローで使う事が多いコロラドはプレーン、クリアウォーターで使う事が多いウィローをハンマードでデザインしようと決めていました。その時点でこれまでよく言われる「マッディ=ハンマード」「クリア=プレーン」という視覚効果優先の理論とは違う新基準のブレードパターンのスピナーベイトという事になります。

ブレード以外の部分はコロラドタイプのアパッチと同じ。

sus301ハーキュリーワイヤー1.0mm径の丈夫なアーム、4/0サイズのビッグフック、ビーズのロウ付とリング部のスポット溶接、特殊なスカートシステムとヘッドのカスタムペイントなどです。

ブレードはシルバーとゴールド、ブラックニッケルの3色をそれぞれにセットアップしています。

カラーバリエーションはクリアウォーターでの使用を考慮し、DW用の追加色をラインナップ

#06 エメラルドシャイナー

#07 スレッドフィンシャッド

#08 テーブルロックシャッド

#09 ブルブリーム

#10 ダークギル

なんだかんだで調整にとっても時間が掛かってしまったアパッチDW、3月~4月頃の発売予定です。

価格などはまた後日ご案内します。

 

 

新春のご挨拶

 

新年あけましておめでとうございます。

昨年末は2017年にリリースしたルアーなどへの想いを綴って締めくくろうと思っていたのですが、通常業務の終わった年末にもそれなりに仕事はあるもので、気付くと今年も新年明けておりました。

昨年弊社に起きた変化として一番大きな出来事は、問屋(谷山商事)さんと契約した事だと思います。

契約する至った理由としてはまず販売ルートの拡大です。

ルアーに限りませんが、物の値段というのは作る数量で大きく違ってきます。例えばプラスティックのクランクベイトを1個作ろうとすると数百万円掛かります。しかしそれを数千個作れば釣具屋さんで普通に売ってる価格で販売する事が出来ます。まあそんな事は誰でもわかる事ですが、販売価格にして数百円の違いの部分に、各社アイデアと企業努力のしのぎを削っている事はあまり知られていないかも知れません。

ルアーを設計する時に、極力開発費を掛けないように既存の部品を使って巧く纏めていく方法と、専用のパーツを作ってギリギリまで攻め込んだ設計をする方法とがあります。普通に考えれば既存の部品を買ってきて、それで巧く纏める方が安く作れ、少ない数量で生産する事が出来るので在庫リスクも少なくて済みます。しかし、より沢山の販売数量を確保する事が出来れば、専用パーツをふんだんに使っても複数の金型代をペイする事が出来、より良い物を安く販売する事が出来ます。

自分はこれまで開発や生産の部分では色々試行錯誤してきたつもりでしたが、こと販売の部分においては無頓着というか不勉強だった部分は否めません。結果としてmibroはおろかKTWにおいてもロクな利益を出す事が出来ず、自分のビジネスセンスの無さをただただ痛感するばかりでした。

以前、知人の方に「正しい事がしたければ偉くなりなさい」と言われた事があります。当時の自分の立場を心配して言ってくれた言葉なんだと思いますが、確かに良い物を作るにはお金が掛かります。「本当に物づくりで勝負したかったらちゃんと利益を出しなさい」という事なんだと考えるようになりました。

また、これまで弊社では出荷業務や在庫管理を全て自宅兼工房で行って来ました。工房といっても元々店をやっていた小さなスペースに塗装ブースや塗装ラック、工作机や機械類が占領する空間に、年々発注量の多くなる商品をストックしておく事は不可能になってきました。

そんな事もあり、販売の方は問屋さんに相談する事にしました。販売は販売のスペシャリストにお願いする事で、自分は開発の方に専念出来ると考えたからです。

問屋さん扱いになる事で、「儲け主義に走った」とか「ただの商売人になった」とがっかりされる人も居る事は予想出来ましたし、それをリスクと考えた事もありましたが、ただでさえ注目されにくい田舎で、後発のブランドにどんどん追い越されていく現状を考えると、このまま続けてもこれ以上にはなれないし、何より同じ場所に立ち止まって同じ事を続ける事の方が、今まで応援し続けてくれたお客さん達に申し訳ないだろうと考え、契約を決断するに至りました。

問屋さん扱いになる以上、ウチの利益率も減りますし、急に売り上げ数が上がる訳ではありませんが、これまで無頓着だったビジネスの勉強をたっぷりさせて頂いた1年間でした。また、取扱店舗数が増えた事で旨味が減った筈の既存の取り扱い店さん達も、売り出しやイベントで「頑張って!応援してるよ!」と暖かい声を掛けて頂けました。

ただただ勉強と感謝の日々だった2017年が終わり、2018年は頂いたご恩を返せる年にしていきたいと思います。ビジネスが広がったお陰で作れる物も増え、作りたかった物が作れるようにもなって来ました。これまで出来なかった方法や、新しい視点でモノづくりを出来る事でお返し出来るご恩もあれば、新しい出逢いもあるかと思います。

2018年も皆さまと一緒に、バスフィッシングに真剣に向き合える年でありたいと願っております。

 

2018年 元旦

mibro代表 塚本謙太郎